相対性理論『シンクロニシティーン』(Mirai)

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 5曲入り約15分の前々作『シフォン主義』、9曲入り約33分の前作『ハイファイ新書』につづいて、今回は11曲入り約40分。こういった言い方自体古いような気もするが、「初のフル・アルバム」みたいな表現も可能だろう。実際それだけの充実作となった。

 ローファイなバンド・サウンドの『シフォン主義』が話題になりはじめたころ初めて見たライヴで、リズム隊の生みだすしなやかなリズムに感銘を受けた。それゆえ『ハイファイ新書』における「歪んだAOR」的サウンドも自然な成長に思えた。そして今回、ある種の違和感やスポンティニアス性を内包したままのソフィスティケーションはさらに進み、最も魅力的だったときの歌謡曲がこの10年代にまだ(普通に)棲息していたかのような錯覚さえ覚える。

 やくしまるえつこのヴォーカルも、ずいぶん印象が変わった。まだ子どもっぽさを感じさせた1作目の衝撃から、よりアニメ度(そんな言葉あるのか?)の強まった2作目をへて、これまでになく人間っぽい。エキセントリック「ではない」、通常の会話に近い部分の発声方法が、新鮮な衝撃。以前とは明らかにレベルが異なる。一抹の「二次元性」もしくは、ある種のアンドロイドっぽさとそれの併存ぶりは、アリソン・スタットン(ヤング・マーブル・ジャイアンツ~ ウィークエンド。ぼくの最も好きな女性ヴォーカリスト)さえ想起させる。

 数ヶ月前に、ツイッターを始めて以来、もともと曖昧な部分もあると感じていた「機械と人間の境界線」が、ぼくの中で、またさらにぼやけてきた。この新しいコミュニケーション・ツールは、普段の生活の中にも無数に存在しているシンクロニシティを顕在化させる。そういった状況に、このアルバム・タイトルは (そして、それが象徴する内容も)よく似合う。

 資本主義ではなく『シフォン主義』を唱える相対性理論というバンドのファースト・(ミニ・)アルバム冒頭曲は(ウルトラ警備隊ではなく)「スマトラ警備隊」。長めのイントロのあと「やってきた恐竜、街破壊」とか、女子が歌いだす。おそろしく今っぽい、そしてSF的な体験だった。未来が見てみたい、と思った。そこで抱いた期待を裏切らないどころか、さらなる驚きが、この新作にはある。

 前作も前々作も、実はデータのみで所有していた。『ハイファイ新書』を聴いて、意外に早く限界が来るかも? などと醒めた見方になってしまった部分もあり(すみません...)今回どうしようか迷った。でも、このアートワークを事前に見て、思わずCDを買ってしまった (個人的な話で申し訳ないのだが、これ、うんこ次郎先生のマンガにしんくろにしてぃーん! みたいな...。ちなみに、うんこ次郎先生とは、初期クッキーシーンに連載してくれていた人です)。そうしたら、あまりに良くて、つい前2作もCDで買い直してしまった。また、もう少し未来をのぞいてみたい、そんな気分で。

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