青野圭祐

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MEW『Frengers』(2003)*画像
ART-SCHOOL『Love/Hate』(2003)
SYRUP16G『Coup d'Etat』(2002)
DEATH CAB FOR CUTIE『The Photo Album』(2001)
MODEST MOUSE『Good News For People Who Love Bad News』(2004)
RADIOHEAD『In Rainbows』(2007)
NINE INCH NAILS『The Slip』(2008)
中村一義『ERA』(2000)
GRAPEVINE『イデアの水槽』(2003)
ELLIOTT SMITH『Figure 8』(2000)

 
 指標なき'00s。散々言われてきた台詞ではあるけれど、こうして自分のプライヴェート・ライフを彩った10枚を見渡しただけでも、幾分、不均等になってしまいました。オルタナティヴの旋風がおさまった地点から00年代は始まり、種々のリバイバルやニュー・レイヴなどのムーブメントこそ起こりましたが、全 体として統一的な価値観が生まれたとは言い難かったのではないでしょうか。00年代に突入して間もなく、ある日本のアーティストが「定めなき世の定めだぜ」と歌ったのですが、まさにこの言葉のとおり、この10年間に登場したアーティストたちはニュー・スタンダードを模索していたと思います。

 そんな10年、僕は何一つ趣味の無い無気力な小学生から大学生になり、その過程、14歳の時期に、日本の「下北系」というシーンの虜になると同時に(特 にUSの)'90sオルタナの洗礼を受けて、無気力小学生時代に使い道なく蓄えていたささやかな財力と何かに夢中になるエネルギーのほとんどを自分の ミュージック・ライフと少しの読書ライフのために注いできたような気がします。その中でも、この選んだ10枚は、とにかく僕を大きく揺さぶらせたアルバムたちでした。

 多くの神経過敏な少年少女がそうであるように、混沌たる中学時代を送っていた自分にとって、常にヘッドフォンから流れていたアートスクールとシロップ16gは、当時から現在までずっと僕を(逆説的に)まともな人間に成長させてくれました。今思い返してみれば、特にアートスクールを何度も聴き返したり、 元ネタをあさったりした経験は、元々あった'90sオルタナティヴへのシンパシーが、様々な方面に派生し、今の自分のオルタナ/インディー志向を固く決定づ けたと思います。

 その派生先で出会った'00sのアーティストで最も感銘を受けたのが、デス・キャブ・フォー・キューティーとモデスト・マウスというシアトルの二大インディー・ロック・アイコン。この縁もあってか、2010年の下半期はシアトルの大学に通うことになりました。'90sから活躍していた、自分にとっての内省を突き詰めた二大オルタナ・バンドであったレディオヘッドとナイン・インチ・ネイルズの時代を象徴するような画期的なリリースと、それに負けず劣らず画期的な音楽としてのクオリティには、当時高校生でありながら、ただただ度肝を抜かされました。

 そんな高校時代の半ば頃に出会った中村一義『ERA』は、初めて聴いた時の衝撃が未だに忘れられない世紀末を目したアルバムで、今でも自分が一個人として周囲と相対する時の一つの大きな指針になっていますし、「僕は行く」という、その言葉にあらゆる面で背中を押されてきたような気がします。それ以前から アートスクールなどと共にヘッドフォンから流れていたグレイプバインの『イデアの水槽』を聴いたことは、大学で哲学を専攻することとなった細々とした理由の一つともなりました。その大学に通っている内に聴いたエリオット・スミスは、自分が敬愛するデンマークの哲学者の著作からタイトルを取ったアルバムをリリースしていることだけでなく、そのフラジャイルな世界の切り取り方で、既に他界していながらも、僕の視界を幾度も滲ませました。

 個人的に、英語圏の国々から少し距離を置いていたことにより、今になってみれば自分にとって最も好きな国となったアイスランドやデンマークに一人旅をした影響もあると思うのですが、00年代は「USかUKか」という二元論が崩壊して過去のものとなった年代でもあると言えると思います。例えば、個人的に北 欧で最も素晴らしいバンドの一つのように思えている、ミューの登場。

 この10年間を表す言葉として、このリストのトップにも挙げた彼らのアルバム・タイトルでもある『Frengers』が言い得て妙です。「聴き慣れたポップ・ミュージックでも腰を抜かすほど奇抜なサウンドでもない」ことを表したこのタイトルは、この00年代を表す言葉であるとも言えるのではないでしょ うか。

 2010年からも素晴らしい音楽に出会えますように。

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