ブロークン・ソーシャル・シーン『フォギヴネス・ロック・レコード』(Arts & Crafts / Imperial) [reviews]

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 初めてトロントを離れ、シカゴでレコーディングを行なった約5年ぶりとなるニュー・アルバム。主要メンバーに加え、ゲスト・アーティストとしてリサ・ロブシンガーやジェイソン・コレットなど12人招き、プロデューサーにトータスのジョン・マッケンタイアを迎えた。これらから「新しいことに挑戦する」というブロークン・ソーシャル・シーンの本作にかける気合が窺える。

 シューゲイザー・テイストでドラマチックに展開する曲があれば、弾き語りに近くとも、どんどん音数を増やし、ソフトなサイケデリック感を醸し出す曲あり、はたまた打ち込みと浮遊感のある女性ヴォーカルが際立った曲ありと、ヴァラエティに富んでいる。室内楽的な響きすらある曲も収録されているのだ。しかも、どの曲も全く隙がなくクオリティが抜群に高い。これには感心し、驚きもした。ただ、難を言えば、ヴァラエティの豊かさゆえに焦点が見付からず、掴みどころがないと思ってしまったのも事実。それでも通して聴かせてしまう。その所以は、ずばりメロディの良さにある。

 なめらかな曲線を思わせるメロディが、突如、折れ線グラフのようにぎこちないが、しかし茶目っ気に溢れた味のあるメロディに移り変わり、良い意味で次の展開が分からないそのメロディ・メイクのセンスが音楽と聴き手の距離を近づける。ヴァラエティ豊かで凝った音響を構築する本作は、どんな種類の楽曲であってもポップに聴かせてしまうという意味で、ブロークン・ソーシャル・シーンのメロディ・メイカーとしての素質を浮き上がらせている。勢いがあった前作でファンになったリスナーは、その勢いが薄れたことで少々残念に思われるかもしれないが、ブロークン・ソーシャル・シーンは良くも悪くもリスナーを裏切る音楽を創作するアーティストであると僕は思う。

 かつてジョニ・ミッチェルが「リスナーに否定されるかもしれないけど、音楽家は常に変化する勇気を持つべきだ」と言ったように、ブロークン・ソーシャル・シーンもまた、変化する勇気を持っている。変化したいからこそ環境を変え、シカゴでのレコーディングを決行したのだろう。この音楽から「僕らにはまだ先があるんだよ」という声が聞こえる。「ここで終わらせるつもりはさらさらないんだ」と言っている。彼らの作品は常に野心的だ。でも、とびきりポップ。大人の遊び心と野心を持ったポピュラー・ミュージックなのである。

編集部より:日本盤は5月26日(水)リリース予定。

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このページは、伊藤英嗣が2010年5月19日 22:09に書いたブログ記事です。

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