ボニー"プリンス"ビリー『ザ・ワンダー・ショウ・オブ・ザ・ワールド』(Palace / P-Vine) [reviews]

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 シカゴ音響派でこそないが、ボニー"プリンス"ビリーことウィル・オールダムといえば、あの界隈における仙人のようなSSWである。外見も仙人さながらなのだが、フォークやカントリーから半身ぐらい乖離した(脱線しすぎるとかえって胡散臭くなる。その塩梅が素晴らしい)独特の孤高感と距離感がまた仙人的なのだ。悟りや真理に指先で触れたかのような神秘さまで孕んでいる。
 
 ここ数作において、曲に明るみが増したり、トータスとカヴァーアルバムをドロップしたりなど、彼のサウンド・スケープには静かな変容が伺える。今作もまたカイロ・ギャング(事実上エメット・ケリー)とのコラボレーションという名目(オリジナル盤のアーティスト表記はBonnie 'Prince' Billy & The Cairo Gang)ではあるが、エメットは既に二枚のアルバムに参加している。極端に言えば「なにも今更そんな名義で出さなくても、エメットがいるのは当然というか...」という心境で新譜に臨んだのだが、確かに違う。コラボ名義でドロップする意義が大いにある。
 
 今作では、ほっこりする暖かさが見え隠れしている。彼らの談笑がどこからか聴こえる。ボニー特有の内省的な姿勢は健在しているが、彼らの間でその厭世を相互理解したような、一種の温もりがある。「仲間しか知らない秘密基地」の共有意識に似ている気がする。
 
 実は歪んだギターがそれなりの割合を占めている。やはりクリーンな音色の方が美しさを想起させるのが常なのだが、どうしてかボニーの楽曲は、ロジックを跳躍して美しく響くことがある。元々私達自身が歪んでいるから、なにかとシンクロする部分でもあるのだろうか。なんにせよ、言語化できない神秘性が潜んでいる。

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このページは、伊藤英嗣が2010年5月15日 20:11に書いたブログ記事です。

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