HOW TO DESTROY ANGELS「How to Destroy Angels」Download EP(Self-Release)

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 去年の2月、ナイン・インチ・ネイルズとしての活動を停止させると発表したトレント・レズナー。「ウェイヴ・グッドバイ」と称されたフェアウェル・ツアーも盛況に終わり(ツアーの一環として、サマー・ソニック09にも出演したのが記憶に新しい)、とうとう隠居生活に入る...わけでは決してなく、塚本晋也監督の映画『鉄男 The Bullet Men』のエンディング・テーマとして曲を提供したり、ナイン・インチ・ネイルズとしてのライブ映像を公開したりするなど、水面下で積極的に活動していました。そこで突如、発表されたのがこの新ユニット、ハゥ・トゥ・デストロイ・エンジェルズ。

 英国のインダストリアル・バンドであるコイルのシングルから名前を拝借したこのバンドのメンバーは、先述のトレント・レズナー、その妻となった元ウェスト・インディアン・ガールのマリクィーン・マーンディグ、古くから『With Teeth』、『Year Zero』、最新作である『The Slip』などの作品のプロデューサーとして長くトレント・レズナーと関わってきたアティカス・ロスの3人。プロジェクトの構想自体はナイン・インチ・ネイルズが活動を停止する前からあったようで、「(新プロジェクトの)関係者の一人と結婚している」と公言していましたし、トレント自体、長いあいだ女性ボーカリストと仕事がしたいと言っていたので、ついにそれが実現した形になるようです。

 さて、サウンドの方は乾ききった電子音、ところどころで突如として残虐に放たれるノイズ、この世の不条理を暴き出したかのような無機質なインダストリアル・マテリアル...と、明らかにナイン・インチ・ネイルズのそれを踏襲したものになっています。これは、トレントがFacebookでの質問に答えたところによると、「ハゥ・トゥ・デストロイ・エンジェルズとしてのセッションの、最初期のものをあえて公開したいと思った」ところであるから、とのこと。そう言った意味で、今の段階では、バンドのイニシアティブを取っているのはトレントと認識しても間違いではないでしょう。とは言え、ボーカルに関しては、トレントは「Parasite」といった曲で、所々でコーラスをしているくらいで、そのほとんどをマリクィーンが歌っています。やはり、これはフロントマンとしての役割は、妻に任せると言う形でしょう。ここでのマリクィーンのボーカリゼーションも、インダストリアルなリズムに乗りながらも、単語を淡々と歌い上げるスタイルで無機質な触感をさらに増していて、冷たく不気味に感じさせることに一役かっています。

 バンドの世界観としても、ナイン・インチ・ネイルズを脱ぎ捨てて、殊更にハッピーになっている...と言うものでもありません。既に公開されている、アルバム始まりの「The Space in Between」のPV。ホテルのような建物の一室で、トレントが血を流して死に絶えていて、マリクィーンも同じくベッドにもたれて、血を流しながら淡々と無表情で歌詞を歌いながら、出火が起こり、マリクィーンを、部屋全体を燃やしていくという相変わらずの痛快な悪趣味で、やはりこれも、往年のナイン・インチ・ネイルズのそれを思わせます。

 現時点では先述のように、どうしてもトレント主体のバンドと思ってしまいそうですが、それは、このEPが「初期の賜物」であるからで、今現在、彼らはフル・アルバムとしてのリリースのため作曲、プロダクションに励んでいるのでマリクィーンのオリジナリティがもっと発揮されることも考えられますし、個人的にもコラボレーションとしての作品を期待したいところです。そして、「フル・アルバムが発表されたあかつきには、2011年頃にツアーもしてみたい」とトレントも意欲的な姿勢を見せているので、まだまだ目が離せません。

 ちなみに、この作品、通常版は無料で配信されており、有料版(2ドル)では、よりハイクオリティな音源と「The Space in Between」HD音源もついてくるとのこと。まずは何はともあれ、そのサウンドを世界観をご堪能あれ。

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