KEANE「Night Train」EP(Interscope)

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 彼らのファースト・アルバムのインパクトは、とても大きかった。「ラジオから流れてきて気持ちいいポップ・ミュージック」という意味で。最初の頃は、ラジオでかかるのを聴くたび、何度も(ぼくが大好きな)70年代の(ちょっとAORがかった)曲かと勘違いしてしまった。その後ザ・フィーリングス、そしてスカウティング・フォー・ガールズへとつづく道を切り開いたというか、この3バンドは、ぼくの中で非常に大きな存在となっている(ちなみに、あとで知ったのだが、この3バンド、関わったプロデューサーも共通していたりする)。キーンの場合セカンドでちょっと「悩み入った自省ロック」に傾いて残念だったものの、サードでふたたび(メランコリックではあっても、あくまで)「ポップ」方面に...。意味がありそうでなさそうでありそうな、『Perfect Symmetry』という素敵なタイトルがそれを象徴している。ファースト・アルバムのタイトルは『Hopes And Fears』。セカンドで"Fears"に流れたとしたら、サード以降、とくにこの8曲入りミニ・アルバムでは、むしろ"Hopes"なベクトルが目立っているというか...。

「夜行列車」という表題からして(いい意味で)ポップ・クリシェっぽい。ぼくなどが聴くと、たとえばオーケストラル・マヌーバーズ・イン・ザ・ダーク(Orchestral Manoeuvres in the Dark:通称OMD)など、80年代のエレクトロニック・ポップに通じる部分も感じる...というか、単に「けっこうOMD寄り」なのかな? キャッチーすぎるフレーズが耳に残るライトなポップ性とか、ちょっと「青い」感じとか...。ちなみにOMDは、1980年にファクトリーからマーティン・ハネット・プロデュースのシングルでデビューしたのち、モノクローム・セットもアルバム・デビューを飾ったヴァージン傘下ディンディスクと契約、さらにヴァージン本体に移籍して「エノラゲイの悲劇」「ロコモーション」(注:カヴァーではない。タイトルだけ頂戴したオリジナル)「イフ・ユー・リーヴ」など、素晴らしいヒット曲を連発したバンドだ...といったところで、キーンの話に戻ろう。ここにおける彼らの音世界も、もちろん「後ろ向き」なものではまったくない。音の感触や、細かいリズムのセンスなど、バリバリ今っぽい。

 3曲目と7曲目にはケイナーン(K'naan)、5曲目にはティガラー(Tigarah)という、かなり若さを感じさせるラッパー/シンガーがフィーチャーされている。ググってみた。前者はカナダ国籍ソマリア生まれの黒人男性ポエット/ラッパー/シンガー・ソングライター/マルチ・インストゥルメンタリスト、後者は日本国籍LA在住の黄色人女性プログラマー/グライム・シンガー・ソングライター。ティガラーのヴォーカルを聴きながら、これは絶対日本人ではないと思っていたため(いい意味で)意外だった。彼女がいわゆるバイレファンキに影響を受けていたということを知り、なるほど、と思った。でもって、ここまで(わざとらしく)隠していた(笑)のだが、5曲目「Ishin Denshin (You've Got To Help Yourself)」とは、OMD...ではなく(笑)YMO...イエロー・マジック・オーケストラ「以心電信(You've Got To Help Yourself)」のカヴァー!

 はっきり言っておくが、これはリリース当時から「クール」な曲ではまったくなかった。「君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス)」が『ザ・ベストテン』クラスのヒットとなり(彼らが実際に出演したかどうかは憶えていない:笑)、その前の『Technodelic』がアヴァンギャルド性を最大限に発揮した超名作アルバムだっただけに、マニアはかなりひいていた(ところで、正直こういう類の「マニア」ノリって、ぼくは苦手です...)。そのうえNHKのキャンペーンとかでも使われていた、最高にポジティヴな歌詞を持つ曲。「虚飾をすてて、素直になろうよ」「誰かのために生きることが、自分のためになるんだよ」みたいな...(だけど歌詞をよくよく聴くと、一抹の皮肉みたいなものがスパイスのようにふりかけられてて、また、いい)。

 YMOの全レパートリーで一番好きかもと思うこの曲(日本語詞)が、いい意味で日本人とは思えないアクセントによって、キーンのミニ・アルバムで歌われる。アレンジもナイスだし。なんか涙が出るほどうれしい。全8曲の流れや、それぞれの曲の、ポップ・ミュージックとしてのクオリティも素晴らしい。最高、ですね。

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