ダーウィン・ディーズ『ダーウィン・ディーズ』(Lucky Number / Hostess) [reviews]

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 安全なロックってどうなのよ! なんて感じながら、良くも悪くも当たり障りのない、このロック・ミュージックを聴いていて思うわけです。が、しかし、同時に、「これ、かっこいいじゃないか」と、思ってしまうのも確かで、全然好きじゃないよ、こんな音楽、などと毒づきながらも、なぜだろう、どうしよう、聴いちゃうんです。悔しいけど。

 ザ・ストロークスやベックと比べられているらしいけど、なるほど、確かに初めて聴いたときはストロークスに似ている、であるとか、ベックの『Modern Guilt』っぽいところもあるよなあ、と、僕も思った。けれども、ストロークスほど遺脱したロックではないし、ここ数年のベックほど作り込んでいない。ニューヨーク出身、ダーウィン・スミスのソロ・プロジェクト、ダーウィン・ディーズの『Darwin Deez』、これは良い。

 何が良いって平和的。高らかに不満をぶちまけるわけでも皮肉を発するわけでもなく、終始和やかに奏でられる音の全ては決して敵を作らないやさしさに満ちている。いわばこの音楽は無敵である。敵を作らなければ無敵なのです。ロックがカウンター・カルチャーである時代は終わったのです。なんてことを思わされ、気持ちが広々としたまま一気に聴ける本作。実にグッドじゃないですか。そもそもがシンガー・ソングライターである彼の紡ぐメロディは繊細で、ぶっきらぼうなところはなく、あくまで丁寧。エレクトロニック音やギター・サウンド、渋みのある歌声もやはり丁寧。時々見せるファルセットもまたしかり。アルバム全体の表情は豊かとは言えないけれど、1+1を4や5にするのではなく、1+1を2にすることの足し算の正当性をきっちりやり続けている真面目さがあって、良い意味で優等生的な音楽になっている。かつ、シンプルなロック&ロールへの敬意がうかがえるサウンドは清々しい心地に溢れ、だから聴いてしまうのだった。やはり、これは、良いのである。

 ただ、だからこそシンプル性で勝負してほしかったなと思ったのも事実。歌声にエコーを効かせ、大胆にハンド・クラップをサンプリングし、遠近感を巧く使ったミックスも功を奏しているけれど、それはアニマル・コレクティヴや他のバンドにも共通するもので、他のアーティストと比べた場合、埋没してしまう可能性も孕んでいる。今後は自分のアイデンティティは何なのかを探り、それを深く追求することが課題になるのではなかろうか。しかしそれを差し引いても良い出来。ダーウィン・スミスによるギター一本の弾き語りも聴いてみたくなった。きっと素晴らしいに違いない。とにもかくにも、まずは本作を堪能しようじゃないか。一曲目だけ聴いてストロークス・フォロワーなどと言う輩がいようものなら、ドロップキックをお見舞いさせて頂きます。

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このページは、伊藤英嗣が2010年6月29日 20:31に書いたブログ記事です。

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