ノーザン・ポートレイト『クリミナル・アート・ラヴァーズ』(Martinee / Vinyl Junkie) [reviews]

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 本年度上半期、情けない男NO.1認定でございます。何なのこの情けないヴォーカルは! きらめくギター・サウンドは! まるで透明度の高い地下水脈を眺めているようだ。いまにも消え去りそうなファルセット。触れれば割れてしまいそうなガラスの歌声。哀感たっぷりのメロディ。言ってしまえばザ・スミスみたいな音楽なのだけど、だからといって素通りしてしまうのはもったいない。このバンドは弱々しい。だが、強気である。

 僕らは好むと好まざるにかかわらず、弱さを感じる音楽に惹かれてしまうところがある。実際、エリオット・スミスを代表に、弱々しさや情けなさが自然と滲み出てしまい、それが良さだと捉えられているアーティストは多い。しかし弱々しくもデンマーク出身の5ピース・バンド、ノーザン・ポートレイトのデビュー・アルバム『Criminal Art Lovers』は、開き直っていると言ってもいいんじゃないか。「俺たち弱々しいんだよ!」という逆ギレに似た男気を僕は感じてしまったのだった。もはや男気という言葉が仁義の世界でしか使われなくなってしまった時代にあって、情けなさというものを男気として押し出すこのバンドから僕は少しおかしな新世代感を覚えるのである。

 それが良い方向に働いているというのも、これまたおかしな話ではあるけれど、実際、サウンドの弱々しさが力強いというパラドックスがあり、「情けない音楽を作ろうとしている気迫」という男気を感じる。その気迫が生むサウンド・アンサンブルが絶妙で、繊細な美しさを持ち、するすると胸に沁みこむ音楽であるにもかかわらず、逆にスカッとするところもあるから不思議だ。本作の音が流れれば、曇り空など吹き飛んで、晴天と化すであろう。憂鬱などというものも吹き飛んで、瞬時に笑顔になるであろう。その爽やかなギターや決して肩がこらないリズム隊の清々しさといったら木漏れ日に文字通り力強い光を感じたときの気持ちになんだか似ている。

 男として生まれたからには堂々と生きたいものである。『Criminal Art Lovers』がまさにそうなのだ。ノーザン・ポートレイトは泣き出しそうな歌声で、情けなさを確信犯的に武器にする。ためらいなく武器にする。弱々しさを音楽性として捉えているそのさまの、開き直っている感じは堂々としていて新鮮だ。「情けなくて何が悪いんだ」とこのバンドは言っている。その強気な姿勢をこれからも貫き通せ。それが彼らの生きざまだ。ただ、ともすればザ・スミスそのまんまだと捉えられそうな音楽性は、もうちょっと薄くした方がいいと僕は思うよ。

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このページは、伊藤英嗣が2010年6月 3日 10:40に書いたブログ記事です。

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