ザ・ドラムス『ザ・ドラムス』(Moshi Moshi & Island / Hostess)

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 例えばザ・ストロークスやフランツ・フェルディナンドがそうだったように、その年、時代のトレンドを象徴するアルバム...ザ・ドラムスのセルフ・タイトル・デビュー作はきっとそう評される作品になるだろう。

 今年、インディ・ロックのブライテスト・ホープといえばこのNYブルックリンの4ピースであることに異論を唱える人はいないはず。サーファー・ブラッドやベスト・コーストといったローファイ・バンドたちと作り上げてきた「夏ムード」の中心。NMEやクラッシュといったUKのメディアにおいても、USのピッチフォークにおいても、期待の新人リストのトップを総ナメ。ここ日本でも、アルバムのリリース一週間後に予定されたDUO MUSIC EXCHANGEでの初来日公演がソールド・アウトしてしまったことからも、驚くほどの人気の高さがわかるというものだ。

 すべての始まりは昨年の夏、ネットにアップされた3分足らずの1曲、「Let's Go Surfing」だった。話題は一気に広まっていき、世界中のリスナーのハートを掴んでしまった。シンプルなフレーズをリフレインするギターや軽快な口笛とハンドクラップが心地よい。まぶたの裏に浮かぶサウンドスケープは真っ青な空と海の、夏。だが、それはまだ始まりに過ぎなかった。なぜなら、続く3枚のシングルとEP『Summertime!』でもしっかりと、類まれなるセンスを証明したのだから。

 そして、待望のセルフ・タイトル・デビュー・アルバムが到着。事前の大きな期待にたがわない名盤といえるだろう。

 もちろん、代表曲「Let's Go Surfing」をはじめ、「Best Friend」「Forever And Ever Amen」といったシングル曲を配した、みんなが求めていたザ・ドラムスがのサウンドがある。フロントマンのジョナサン・ピアースはモリッシーばりに歌い上げ、ビーチ・ボーイズ譲りのコーラスワークがフックを作り上げる。ローファイなギターでドライヴするポップは本当に気持ちがいい。

 だが、それだけではなく、これまでの楽曲では見られなかった姿も浮かび上がってくる。「It Will All End Of Tears」では、ジョイ・ディヴィジョン「Love Will Tear Us Apart」を思わせるようなポスト・パンク風のビートが刻まれているし、「I'll Never Drop My Sword」では悲しみを帯びたヴォーカルが印象的だ。また、さんさんと降り注ぐ太陽が輝く海を思わせたシングル曲に対し、「Down By The Water」はまるで夜の海。ぐっとテンポを落とし、センチメンタルな雰囲気がぐっとムードを盛り上げる。これらの楽曲により、ローファイ・バンドとは一線を画すソングライティング能力があることを見せてくれる。「夏」ムード一色になりつつある2010年USインディにおいて、間違いなくシーンを象徴するアルバムだ。

 そもそも、フロントマンのジョナサン・ピアースとギターのジェイコブ・グラハムは幼少からの親友同士。かつてはゴート・エクスプロージョン(Goat Explosion)というシンセ・ポップ・バンドを一緒に組んでいたが解散。続いて、ジョナサンはエルクランド(Elkland)、ジェイコブはホース・シューズ(Horse Shoes)というバンドを組むも、それぞれ徒花として消えてしまう。その後結成されたのがザ・ドラムスというわけだ。3度目の正直とでも言うべきか、このバンドには一切嘘がない。正直だ。ビーチ・ボーイズにニュー・オーダー、ザ・スミス、オレンジ・ジュース、それにフィル・スペクターなど、彼らがリスペクトしてやまないレジェンドたちの影響を隠すことなく表現、モダナイズした楽曲を作ってきた。きっと、ジョナサンとジェイコブの堅い友情がこの奇跡のようなアルバムを生んだのだろう。アルバムの1曲目が、お互いが死んだときのことを想定し絆を確かめあうという内容の「Best Friend」で始まっているのも、きっとそのためだろう。

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