クオル(CUOL)「アレゴリーとシネクドキ」EP(Self-Release) [reviews]

| | トラックバック(0)
cuol.jpg
 矢継ぎ早に次ぐ矢継ぎ早、攻撃的な轟音ファンタジー!

 ひとたび音が轟き渡れば、普段意識しない血流の流れや、胸の鼓動が早まるのを感覚するほどに心身が研ぎ澄まされる。耳にすれば圧倒的に聳え立つウォール・サウンドと、不思議な世界観を紡ぐ言葉でありながらパーソナルに響く詩によって、ハイにもなるし、メロウにもなるが、その何れもが"それ(音楽を聴くという行為)"に追随するリアクションを取る以外に成す術がないのだ。

 茨城県出身の3人組(ナカヤマ/Vo&Gt、ハル/Ba、ホソヤ/Dr)というバイオ以外の詳しい情報は明確ではない。瞬時にインパクトを与えるドールの顔のアップが目を引くアートワークといい、ルドルフ・ウィトカウアー『アレゴリーとシンボル』にインスパイアされたと思われるが、フロントマンのナカヤマ氏のバンドの中核を担う絶対的な個性を誇るセンスは、ぎらつく野心も同時に感じさせる。とにもかくにもスメルズ・ライク・オリジナル・スピリット。そしてシンプルな楽器編成でありながら、緻密で高度に組合わさる業の応酬は、さながら少林寺の演武を開いた口が塞がらず眺めているかの様に、人間業ではないのでは?と、現実から非現実の扉を打ち鳴らされる轟音で押し開く。その力強さはハル嬢とホソヤ氏のバキバキとタイトでありながらしなやかに"うねる"柔と剛が入り混じるグルーヴも一因しているのは間違いない。

 加えてエモ、ポスト・ロック、オルタナなど90年代以降のロックを基調としているのも間違いない。メロディの美しさも特筆すべき点で、急上昇&急降下を繰り返す唯一無二のスリルを体感させ、落ちそうで落ちずに超低空でグライドする緊張感を伴った爽快感。自由奔放な日本語が踊るナカヤマ氏の伸びやかな歌も、安易に和のテイスト漂わせればよしといったものではない。全7曲を通して物語が出来上がり、我々は激しくも甘美な堂々巡りに迷い込む。時に美轟音に雪崩れ込む展開に身を委ねていると、ENVYらが切り開いたポスト・ロックとポスト・ハードコアの境界線を貫いた新境地に、新たに揺れ動かぬ普遍性=ポップを携えて見事に時代を出し抜いた彼らの自信に満ちた笑顔が脳裏に浮かぶ。

 ライブを観た者なら分かるのだが、ただ歌っている訳ではない。ただ叩いている訳ではない。ただ鳴らしている訳ではないのだ。全てのサウンドを踊るように演奏している。結果、全てのサウンドが踊るように灼熱を放った。踊るとは、全身全霊で体現する事なのだ。そして掻き鳴らされる、そのサウンドも全身全霊で踊っている。そんなサウンドを耳にした我々もまた、全身全霊で踊る他ない。

 エモーションなんて言葉は後日談に使えばいい。後日談を当分語れぬ程の感動が現在を進行するポスト・ロック世代が求めるポスト・ポスト・ロック。彼らはとっくに先へ行っていて、不肖達をずっと先で待っている。俺たち=今の時代なのであれば、時代はもうこれ以上彼らを待たせてはいけない!

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: クオル(CUOL)「アレゴリーとシネクドキ」EP(Self-Release)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/2144