この世に存在する数多くのライヴ・バンドを悩ませているのは、"アルバムを聴くより、ライヴの方がいい"という、何とも微妙なニュアンスの台詞だろう。褒め言葉のようにも聞こえるけど、受け取り方によっては"ライヴはいいけど、アルバムはいまいち"ってことだもんね。瞬間の熱量が重視されるライヴと違って、繰り返しのリスニングに耐えうる面白みのあるプロダクションや、ソングライティングの力量が問われる"作品性"は、多くのライヴ・バンドにとって、越えなければならないハードルなのである。
パンク&ファンク&ダンスで時代をリードしてきた生粋のライヴ・バンドである!!!も、メンバーの脱退などを経て遂に"作品性"と向き合うことになった。そして本作は、ベルリンでのレコーディングによってミニマル・テクノからの影響を消化し、DFA人脈のエリック・ブルーチェックを共同プロデューサーに迎えてプロダクションを強化することによって、一定の成果を収めることに成功している。クールな「AM/FM」でスタートし、ストリングスを配した本作一ポップな「The Most Certain Sure」で勢いをつけると、そこから手を変え品を変え、じわじわとグルーヴを生み出していき、女声コーラスが華やかな「Even Judas Gave Jesus A Kiss」から、本編ラストの「The Hammer」で大爆発! というミックスCDを聴いているかのような流れもばっちりで、間違いなく、及第点を与えられる作品だ。
あれ? ミックスCD? そう、このアルバム、明らかに"作品性"を追求したアルバムなのだが、曲順だけは現場=ライヴを意識したものになってしまっている。"作品性"を追求するのであれば、むしろこれまでのアルバムのように、最後は静かな曲で終わっていた方がよかったのかもしれない。まあ、空間を生かしたプロダクションにしてもリリックの面白みにしても、比較するならLCDサウンドシステムの方に一日の長があるように思うし、ソングライティングにしても、ほどほどにポップではあるが...。つまり、本作は!!!というライヴ・バンドが初めて"作品性"を重視して制作した意欲作ではあるものの、まだ"ライヴ>アルバム"という不等号の向きを変えるまでには至らなかった、ということになるのだろう。
とはいえ、やはりフジでのライヴは楽しみでならない(今年は堂々初日ホワイト・ステージのトリを飾る)。"作品性"を重視するあまり、肝心のライヴ・バンドとしての魅力が損なわれてしまうケースも時々あるが、!!!に関してはその心配は無用だろう。「The Hammer」でステージを駆け回るニック・オファーと、それに熱狂するオーディエンスの姿が容易に想像できるというものだ。あ、あと『Strange Weather,Isn't It?』っていうこのタイトル、コロコロと変わりやすい苗場の天気にぴったりのタイトルだよね。ははは。
