ジョニー・マー&オウガ・ユー・アスホール

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JOHNNY MARR & OGRE YOU ASSHOLE

つきつめると、音楽さえ良ければ
たいていどんなことでも我慢できるんだ


昨年のザ・クリブス東京公演を見にいったとき、フロント・アクトをオウガ・ユー・アスホールが務めていた。彼らはたしかにいいバンドなんだけど、これまで(とくに中心人物の出戸が)USインディー・ファン、というイメージが強くて、ちょっと意外なとりあわせだと感じた。現在はクリブスのメンバーとなっているジョニー・マー(もちろん、ザ・スミスのギタリストとして最も有名)に、開演前の楽屋でちょっとだけ話をする機会があったのだが、オウガの話になると目を輝かせ、「いいバンドだよね!」と言っていた。あとで聞いたところによると、この日彼らが演奏するのも、ジョニーの強烈なプッシュで実現したらしい。そういえば、ジョニーって、クリブスに加入する前はモデスト・マウス(これは出戸も大好き)にいたわけじゃん...と考え、なんとなく、つながり(?)が見えてきた。

そしてフジ・ロックの初日には、偶然にもクリブスとオウガ・ユー・アスホールがどちらも出演する。この機会を逃す手はない...というわけで(とくにジョニーは、あまりにビッグな人なので、できるかな...と思いつつ)両バンドの対談を申し込んだところ、あっさり実現してしまった。

以下、その全貌であります!

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all photos by Toru Yamamoto

ジョニー・マー(以下J):もうアメリカ・ツアーには行ったの?

出戸学(以下D):まだこれからです。11月です。

J:ポートランドとか?

D:そこは残念ながら...。東海岸とかシカゴとか、最後はカナダのトロントになる予定で。全部はまだ決まってないんですけど。

もともとジョニーさんはオウガの音楽を気に入られていて、昨年のザ・クリブス来日公演のフロント・アクトをオウガがつとめた理由もそれだと聞きました。ジョニーさんがオウガを聴かれたきっかけと、どういうところが好きなのかを聞かせてください。

J:2007年だっけ? 08年? モデスト・マウスと日本に来たときに2日間ショーをやったんだけど、そのときにモデスト・マウスのメンバーから「こういうバンドがいるんだよ。絶対ジョニー気に入ると思うよ、そのバンド」っていうのを聞いていて、で、すごくライヴを見るのを楽しみしてたんだよね。で、そのときにモデスト・マウスのベースがバンド名を考えたっていう話とかも聞いていたし、「絶対に気に入るよ」って言われたのがオウガを知るきっかけだったね。

そうなんですね。モデスト・マウスがもっと前に来日したときにオウガ・ユー・アスホールという落書きを見て...というのは知ってたんだけど...。

D:今ジャケットを描いてて、昔ドラムをやってたヤツの腕に、彼が(落書きを)描いたんです(笑)。

J:知ってる知ってる、その話。それは街の中で?

D:そう、松本の街の中で(笑)。

J:ギターの絡み方がすごく好きなのと、あとヴォーカルのメロディーもすごい好きだし、なんと言っても元気というか、そのエネルギーがいいね。

D:ありがとうございます。

ジョニーさんに「ギターの絡みが好き」って言われて、ギタリストとしてどうですか?

馬渕啓(以下M):畏れ多いです(笑)。

J:ベースとドラムも好きだよ。

全員:ははははははは。

ちょっと不思議と言えば不思議で、オウガ・ユー・アスホールにはアメリカン・インディー好きというイメージがあって、だからモデスト・マウスなのはよくわかる...。で、腕にバンド名を予言のように描かれた元メンバーはここにはいなくて、ジョニーさんも今はザ・クリブスのメンバーで、もうモデスト・マウスにはいない...。

J:まあ、僕もアメリカン・インディーが好きだってとこじゃないかな、通じるものがあるのは。僕は90年代から2000年にかけてイギリスから出てくるバンドが好きじゃなくて、ブリットポップとか全然好きじゃなかったし、グレアム・コクソンはミュージシャンとしていいと思うんだけど。で、そのときってクラフトワークみたいなのとか、エイフェックス・ツインとかボーズ・オブ・カナダとかを聴いてて、そこからビルト・トゥ・スピルを聴いて、エリオット・スミスとかクワージ、モデスト・マウスとかを聴くようになって、なんか好きなバンドってそういうところだったんだよね。フランツ・フェルディナントが出てきたときは好きだったけど、他にあんまりUKのものは好きじゃなくて、その頃はアメリカンインディーばっかり聴いてたんだ。

D:趣味がすごい似てるのが不思議(笑)。

J:どういうの聴いてた?

D:今言ったところは全部聴いてました。

J:初めてオウガを聴いたときに、それこそブロンド・レッドヘッドとかビルト・トゥ・スピルとかのいい部分、好きな部分をただコピーしてるんじゃなくて、当然自分達らしさも持ちつつ、いい部分を継承してるなって感じたよ。自分達独自のスタイルを持ってて、ベースとかベースラインとかも聴いてすぐわかるし、ヴォーカルもすごく特徴がある。だけど、サウンドはちょっと違うと思ったね。パンチが効いてる(笑)。新しい音源とか作品はあるの?

D:あります。ミニ・アルバム「浮かれている人」というのが、もうすぐ出ます(レビューはここ、その作品に関するインタヴューはここに)。

J:クール! ビデオとかは?

D:これから撮ります(できました。1曲目「バランス」のビデオはこちら)。

J:新しいレーベルはどう?

D:すごくいいです。

J:前回のビデオがすごいよかったよ(『フォグランプ』収録曲「ヘッドライト」のビデオはこちら)。あれはけっこう前になる?

D:前回のだと1年くらい前になります。

逆に、ザ・クリブスにいるジョニーさんを見てどう思います?

D:ギタリストとして、どのバンドにいても存在感があるっていうのがすごいすね。

J:ありがとう。目立ちすぎないようには心掛けているんだよね。やっぱりバンドはバンドでちゃんと機能しないとだから。なんかね、3Dの映画を見てるような感覚になってもらいたいんだ。僕らのバンドを見たときとか音を聴いたときにね、3Dのメガネをかけたときみたいにいきなり二次元から音とか背景とかが浮かび上がってくる、その感覚っていうのを味わってもらいたいんだよ。あまり自分が出しゃばって...例えばザ・スミスっぽい方向にどんどん出しちゃうと、粋じゃないっていうか、カッコ悪いっていうか、ショウビズになっちゃって、それこそ売れ線のほうにいっちゃってる感じがして、アーティスト性っていうのが減っちゃう気がするんだよ。

D:ああー。

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J:2本のギターが絡む音が好きなんだ。ライアン(ザ・クリブス)にしてもアイザック(モデスト・マウス)にしてもそうなんだけど、僕が「いいな」と思うギタリストと一緒にやることで、弾くときに刺激を受けて、対抗心じゃないけど「自分はもっとこうやってやろう」っていろんなものが出てくるのがすごく好きなんだ。レーシング・カーみたいな感じだね。同じチームにいるんだけど、2人で競うことによってよりスピードが増すっていうか。僕とライアンも、例えばライアンに前に出てもらって、僕はバックに徹するとかもやるし、その逆もあるし、2人で同じものを弾くってこともやるんだけど、それは僕にとっては2本のエレクトリック・ギターが絡んでるサウンドがこの世で一番だと思うから。世の中にはオーケストラとかいろんな音があると思うけど、僕は2本のエレクトリック・ギターの音が最高だと思うね。レオナルド・ディカプリオの映画『インセプション』のサントラをハンス・ジマーと一緒にやったんだけど、そのプレミアではオーケストラと一緒に演奏したんだ。オーケストラもほんとに素晴らしくて、美しい壮大な音が鳴るし、ハンス・ジマーがやるシンセやムーグもすごく美しい音を出すんだけど、そこにエレクトリック・ギターが入ることで尖った表情を加わってカッコよくなったよ。僕はそういうふうに感じたね。

オウガの場合、こんなコンビネーションでやってる、っていうのは?

D:そうですね、まあ、なんというか...。

J:僕がオウガのギターで好きなのは、だいたいのインディー・バンドってひとりがリズムに徹して、ひとりがメロディーを弾くっていう役割がはっきりしてるバンドが多いんだけど、オウガは絡み方が複雑というか凝っていて、それもものすごい考え抜いて練られたっていうよりは、直感でやってる感じがするんだよね。もちろんちゃんと考えてるんだろうけど、すごく丁寧に作り込まれてるって感じないライヴ感があると思うんだ。聴けば「このバンドはライヴ・バンドだな」って思うしね。でも、ひょっとしたらほんとに何も考えてなかったり? たまたま上手にできちゃってるのかな(笑)? もしたまたまだったら、それはナイショにしといたほうがいいよ。「計算してこういうふうになってる」ってしといたほうがいい(笑)。

全員:なはははははは。

D:たまたまです(笑)。

J:曲を書くときはジャムったりするの?

平出規人(以下H):両方ですね。最近はもう作ってきたり。

でも、もともとはジャムで始めてたんだよね。

J:そうなんだ。あれ? 誰か大学に行くとかそういう人いなかったっけ?

D:大学...?

J:あ、大学に行ってて、とかそういう話だったかな(笑)。勉強はね、したほうがいいよ。ちゃんとした勉強をして、ちゃんとした仕事をしてお金を稼ぐのがいい(笑)。

全員:ははははは。

大学にはけっこうみんな行ってなかったっけ? 違うかな?

J:それはいい! 音楽自体にすごい知性を感じるよ。しかもアップビートで。

D:ありがとうございます。

J:イギリスとかは行かないの?

全員:行きたいです。

J:難しいよね。イギリス自体にもバンドはいっぱいいるから。言葉の問題じゃないと思うんだよ。バンドが飽和状態だってことと、あとイギリスのほうはなにかといろいろ高いから経費がかかるね。

D:アメリカはウルフ・パレードってバンドのオープニングアクトで1ヵ月ぐらい回ります。

J:そうなんだ。それはどうやって決まったの?

D:ウルフ・パレードのヴォーカルの人がやってる別バンドのサンセット・ラブダウンっていうバンドがあるんですけど、それを僕らが日本に招待して一緒にやってもらったんです。

J:(ウルフ・パレードのヴォーカルのひとりダンがやっている)ハンサム・ファーズ?

M:じゃないですね。もうひとりのほう。スペンサー。

J:ああ、スペンサーね。そのバンドは知らなかったな。いいバンド?

D:いいバンドですよ。

ですねー(なお、オウガ出戸とサンセット・ラブダウン・スペンサーの対談が、雑誌時代のクッキーシーン77号に掲載されています)。

J:最近は何を聴いてる?

D:最近は何買ったかなあ...。明日(フジロック)はダーティー・プロジェクターズとかすごい楽しみですね。あと、この前ザ・レインコーツ見てよかったです。日本に来てたんですよ。おばあちゃんだったけど、すごい若かった(笑)。

J:ペイヴメントは見に行った?

D:はい、見に行きました。

J:もちろん、って感じだよね(笑)。最近、新しいギターとか買った?

M:買ってないですね。買えないです。

J:僕は今ギターを作ってて、昔のフェンダー・ジャガーのいいとこばっかりをとって、よくないところを除いたやつを(笑)。ライヴの時間はかぶってるんだっけ?

D:はい、ちょっと。

J:それは残念。そのギターのプロトタイプを持ってきてるから見せようかと思ったけど...。

D:ステージが終わったらすぐ行きますよ。

M:取材とか、あるんじゃない?

D:あ、そうだ。

J:君のはムスタング?

M:ムスタングです。

J:いいギターだよね。

ムスタングからジャガーなら、シフトしやすいかも(笑)?

M:似ているとこありますからね。

J:音も似てるよね。やっぱ音は大事だから。ところで、(いわゆるクラウトロックの)カン(Can)は好き?

D:好きです、好きです。

J:カンのアナログをね、アナログって普通33回転じゃない? それを45回転でかけたらオウガっぽくなるんだよ(笑)。

全員:ふははははは!

D:面白いな、それ。

J:オウガのなかで一番長い曲って何分ぐらいある?

D:8分ぐらい。

J:どの曲?

M:『フォグランプ』っていう前作の最後に入ってる「ワイパー」っていうやつ。

J:そうか。いやね、長い曲をやったらいいんじゃないかなと思ってたんだ。さっき言ったカンみたいな(笑)。曲名が日本語で書いてあるから「この曲」って言うのがなかなか難しくて、この間はグーグル翻訳使ってみたりしたよ(笑)。

全員:ふははははは。

J:タイトルをコピペしてね、やってみたんだよ。で、頑張って1枚のアルバムの曲名を調べてみたんだけど、あまりにも時間がかかりすぎたからそれ以来やってない(笑)。しかも間違ってると思う(笑)。

タイトルはもちろんだけど、訳詞も英語で入れればいいのに。

D:いや、訳せないんじゃないかな。ヘンな日本語が多いから。

勝浦隆嗣(以下K):あのニュアンスが難しいですよね。

J:iPodにも入れてるんだよ。でも自分なりのタイトルだから合ってるかどうか見てもらってもいい?

全員:(ジョニーのiPodを覗き見る)

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J:ええと、「Back Seat(バックシート)」でしょ、「Coin Laundry(コインランドリー)」、「Mask(マスク)」、「Stew(シチュー)」...。

D:はいはいはい。

M:『アルファベータ(vs. ラムダ)』だね。

J:間違ってないみたいだね。よかった。あとは...うわ、「ディス・チャーミング・マン」が出てきちゃった。

ふはははは! ザ・スミスですね。

J:ヒドい曲名だ(笑)。グーグル翻訳できててよかったよ。でもタイトルを英語に直すのはすごい時間かかったから、今はだいたい曲を覚えて「あの曲かけよう」とかしてるんだ。ランニングしてるときに聴くとすごくいいよ。リフがいいよね。

D:いろんなバンドでプレイするっていうのはどういう感じなんですか? 僕らはオウガだけしかやったことないんで。

J:今までちゃんとしたメンバーとして参加してきたのはエレクトロニック、ザ・クリブス、モデスト・マウス...、当然ザ・スミスもそうなんだけど、それらの中心でやってる人達がみんな真剣に音楽をやっているってところがすごくよかったんだと思う。僕にとって音楽は仕事でもあるけど、人生で一番大切なもの。家族もそれを理解してくれていて、音楽が僕にとっては一番で、他のすべてのものが次にくるっていう、それと同じくらいの気持ちとか熱意で音楽に向かってるっていう人とバンドが組めたってこと、同じイデオロギーを持ってやってることが一番よくて、で、そのイデオロギーの違いを感じたら僕は次に進むんだ。14、15のときからずっと音楽をやってきて、他の友達と同じように「音楽をやりたい」って気持ちから始まったんだけど、途中から考え方の違いから「なんとなくズレてきてるな」っていうのでうまくいかなくなったりして、そういうのを繰り返してきて。人によっては「バンドをいろいろ移り変わってる」って思うかもしれないけど、自分としては、ある時期ものすごく集中してそこから学べるだけのものをすべて学び取って、で、自分が貢献できるもの、役立てられるものを役立てて、それをやり尽くしたなと思ったら、また新しいものを学びに、吸収しに次へと進みたいと思ってずっとやってきてるんだ。

D:すごい。

J:確かにちょっと普通とは違うかもしれないけど。今もそうなんだけど、バンドをやるときはすごく真剣にやりたいと思ってるから、音楽に対してもそうだし、毎日「今日は何をするんだ」「だったら、きっちりやりたい」って密度の濃い形ですごくやりたいんだって常に思ってるんだ。そういう相手ともやりたいね。そうだ、ソロ・アルバムをやりたくなくていつもバンドをやってるっていうのもひとつの理由かも(笑)。

全員:なははははは。

J:すごい仕事好きなように見えるかもしれないけど、実は怠け者で、ソロワークやるのが面倒くさいからバンド入っちゃうのかもしれない。

D:だけど、どこに入ってもうまくいくっていうのはすごいですよね。

J:つきつめると、音楽さえ良ければ、たいていどんなことでも我慢できるんだ。アル中もいるし、彼女とのいざこざを持ち込むヤツもいるし、自分大好きなヤツもいる...。全部モデスト・マウスに当てはまるんだけどね(笑)。

全員:ははははは。

オウガはどうですか?

D:僕らはそんなヒドい人はいないです(笑)。

J:もう少ししたら出てくるんじゃないかな(笑)。でもこうやってちゃんと知り合えたのは嬉しいし、いつも新しい音楽を聴くんで楽しみにしてるんだ。これからもいい音楽を作ってくれるんじゃないかって期待もしてるから。そうそう、これで売れていって、たくさんお金が入ってくるようになるとケンカするかもね(笑)。だからお金が入ってくるようになったら僕に声かけてよ。マネージャーやってやるからさ(笑)。


2010年8月
取材、文/伊藤英嗣

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