ハーツ

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HURTS

僕達は「それ以外」のことを強調した
音楽を作っているんだ


1月13日から15日にかけて、大阪と東京で計3公演をこなしたハーツ。僕は15日のライヴを観たんだけど、残念ながらアダムが病欠で不在だった。しかし、それでもハーツというバンドの本質の一端を垣間見ることができたと思う。その本質とは、ハーツというバンドが持つ「確固たるポップ観」だ。

『Happiness』のレヴュー
でも書かせてもらったけど、ハーツはすごく誠実にポップというものに向き合っている。でも、海外や日本国内のインタヴュー記事やレヴューを見てみると、80年代ニュー・ウェイヴやポストパンクとの比較論を基にしたものばかりで、正直うんざりしていた。そうした比較論でハーツを語る人達は、歴史性的文脈という過去の亡霊にとりつかれたアホです。いまや歴史性なんて無くなったも同然だし、だからこそ思いもよらない土地や国から素晴らしい音楽がたくさん生まれているというのに...。もちろん音楽的文脈が無くなったわけじゃないけど、それは「歴史」ではなく「人それぞれ」に存在しているのが「今」だと思うのだけど、どうだろうか? ただ、「人それぞれの文脈」は昔からあるものだ。でも、その「人それぞれの文脈」が多くの人に共有されるようになったのはゼロ年代以降の特徴だと思う。

そういう意味でハーツは「時代の寵児」としてポップ・スターになりえる資質を秘めた存在だと思う。それはインタヴューを読んでもらえば分かるけど、セオはあくまで「自分にとってのポップ・ミュージック」を語っているからだ(僕もそこを訊きたくて、そうした類の質問を多くしてみた)。前置きが長くなってしまったけど、とにかく読んでください。ハーツが真のアーティストであることが分かるはずだ。ちなみに、セオは美しかった。久々にノンケであることを悔しく思ってしまった。

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今日はよろしくお願いします(クッキーシーンのトップページを見せる)。

セオ・ハッチクラフト(以下T):おお、カッコいいね! (写真を指差して)エヴリシング・エヴリシングやドラムスとは友達なんだ。

へえ、そうなんですか!

T:うん。ドラムスに関しては「Down By The Water」をリミックスしたばかりだしね。

なるほど。ではさっそくインタヴューを始めますね。前回はサマーソニックで来日をしてますが、前回と今回で観客の反応に違いはありました?

T:去年サマーソニックで来日できたのはハイライトのひとつだけど、当時はアルバムもリリースされていなかったし、そこが一番の違いかな。今回の来日はサマソニの10倍くらい盛り上がったよ。観客もたくさん来たし、一緒に歌ったり踊ったりしてくれて最高だったよ。

僕は15日のライヴを観させてもらったんですが、アダムが病欠してしまい残念でした。アダムの様子はどうなんですか?

T:大阪のショーも14日のショーも何とか頑張っていたんだけど、夜にはホテルへ帰ってしまって、次の日の朝すぐに病院に行ったんだ。それでも体調が戻らなくて...。アダム自身は15日のショーに出られなかったことを悔しがっていたし、今日この場に居れないことを申し訳なく思っていたけど、周りのみんなと話し合って帰ることになったんだ。

そうだったんですか...。しかし15日のライヴは、観客のほうもアダムの不在を埋めようと盛り上がっていたように映ったんですが、セオはどう感じてました?

T:それはすごく感じた。僕もアダムが居なくて不安に感じた部分はあったけど、バンドのメンバーが助けてくれたし、観客もすごく盛り上げてくれて本当に嬉しかった。だから15日も気持ちよく歌えたよ。

ハーツのライヴはヴィジュアル面も意識してますよね?

T:そうだね。大勢のお客さんに来てもらっているから普通以上のものを見せなきゃいけないし、細かいところまで意識しているよ。

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そういう意味では、ハーツの音楽って「ポップ・ミュージック」ですよね。個性や美意識を強調するという意味で。

T:ポップ・ミュージックはふたつある。ひとつは、万人が楽しめて盛り上がれるポップ・ミュージック。もうひとつはオルタナティヴなポップ・ミュージック。僕達は昔からオルタナティヴなポップ・ミュージックに惹かれていたし、というのも、人生はいつも楽しくてハッピーなことばかりじゃない。それ以外のこともたくさんある。だから僕達は「それ以外」のことを強調した音楽を作っているんだ。

ということは、現在のポップ・シーンに不満を持っているということですか?

T:ポップ・ミュージックというのは、個性があって初めて活きてくるものなんだ。マイケル・ジャクソンやマドンナは個性を持って自分らしくやっているよね? やっぱり、自分らしく正直でいることが良いポップ・ミュージックを生み出すと思う。現状を見てみると、例えば昔はオアシスとスパイス・ガールズが同時に存在していた。でも今はスパイス・ガールズしかいないみたいな状況で、「じゃあそれを好きじゃない人は何を聴けばいいの?」という部分でぽっかり穴が開いているのは非常に残念だ。

マンチェスター出身のバンドって、そういう穴を自分達で埋めようとする傾向があると思うのですがどうでしょう? ニュー・オーダーやザ・スミス、最近だとデルフィックがそうです。そしてハーツもその穴を自分達で埋めようとしていますが、それはマンチェスターの土地柄? それともハーツの二人が持つバックグラウンドがそうさせるのですか?

T:そう、まさに! マンチェスターというのはそういう土地柄だと思う。というのも、マンチェスターはいつもロンドンに次いで2位なんだ。だから野心を抱かせるようなところもあるし、オアシスやニュー・オーダー、ザ・スミスも自分達のメッセージを強く主張しているよね。僕達の場合は両方だけど、マンチェスターの出身はそこをすごく重視していると思う。

なるほど。では、ハーツ自身が「ポップ」にこだわる理由はなぜですか?

T:僕達の音楽的素養というのもポップ・ミュージックを通して学んだものだし、今思えば僕の大切な思い出もポップ・ミュージックが関連している。それと最近気づいたんだけど、「ポップ」というのはジャンルではなくアティチュードなんだよね。人を一体化させる要素があるもの全てがポップなんだと思う。ロックでもパンクでもヒップホップでも、人を結びつける要素そのものがポップというものだから、僕達はポップにこだわっているのかも知れない。

そんなハーツのポップ観と共感できるアーティストやバンドはいますか?

T:ドラムスだね。自分のテイストを大事にしながら、ポップ・ソングを書いているという点で共通する部分はある。すごく大事なのは、アメリカのポップ・ミュージックみたいに「みんな同じじゃなきゃダメ」というノリがあるなかで、ドラムスは個性で勝負しようとしているし、そこも僕達と共通している。いろいろ野心的なポップメーカーがいることでシーンにいい効果をもたらすと思うし、それはいいことだよね。

そこまで個性を打ち出しながらポップ・ソングを作っていくと、ファンを選んでしまう危険もありそうですが、そういう付いてきてくれるファンを裏切ってまで「売れる」ということに恐怖心があったりします?

T:大事なのは、常に自分らしく正直でいること。どんなに「売れ線」のアルバムを作っても、正直であればファンも付いてきてくれると思うし。それに、僕達のような段階にいるバンドは、僕達の個性に共感して付いてきてくれるファンを獲得していきたいし、ファンも共感したバンドが大きくなるとパートナー意識を持ってくれると思うんだ。

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ステージでのセオを見ているとモリッシーを連想してしまいます。というのも、モリッシーが花束をマイク代わりに使っていたように、セオも花を客席に投げていたりしたので(笑)。モリッシーの影響は受けてますか?

T:確かにモリッシーはそんなことやっていたよね。でも、僕達の場合は花がもったいないからやっているだ(笑)。というのも、ショーをやる度にたくさん花を貰ったりするんだけど、ツアー先に持っていくことはできない。だったらお客さんに分けてあげようということで、ああいったパフォーマンスをやっているんだよ(笑)。

そうだったんですか(笑)。では実際にセオがパフォーマーとして影響を受けた人は?

T:曲は自分が影響を受けてきたものが自然と出るんだけど、パフォーマンスは意識して取り入れるものだろ? 僕はデヴィッド・ボウイやマイケル・ジャクソンが好きで、実際憧れてもいるんけど、あれを実際にやるとなるとかなり難しい(笑)。

個人的には、モリッシーの他にフレディ・マーキュリーも連想してしまったんですが...。というのも、セオはクールに振舞っていながらも、抑え切れない感情を爆発させる瞬間が所々あったので、そういう点で共通すると思い名を挙げてみました(笑)。

T:そう言ってもらえて本当に光栄だよ! フレデイ・マーキュリーも好きだしね。 あと、ショーはお客さんが居ないと成り立たないものだし、大勢のお客さんのエネルギーに影響されてしまうことは絶対あるよね。

今回日本に来る前にも様々な場所をツアーで回ってきましたが、日本と他の国の観客の違いや、印象深い観客などはいましたか?

T:サマーソニックのときも、そして今回のツアーの観客も本当に最高だった。僕達のアルバムは主にイギリスとドイツで売れているんだけど、そこの国の最高な観客に負けない盛り上がりがあった。そういえばアイスランドに行ったときの面白い話があって、そこで「Stay」のMVも撮ったんだけど、同時に2000人規模のショーもやったんだ。開場の1時間前から「ハーツ! ハーツ!」っていう歓声が凄くて...。ショーが始まってからも、クラウド・サーフィングやステージ・ダイヴィングが起こるんだ! しかも「Silver Lining」みたいな曲でだよ(笑)!! 僕達としては、正直微妙な感じではあったんだけど(笑)、あれはすごく印象に残っている。

いま話にも出たんですが、ハーツはドイツでも人気なんですよね。何故だと思います?

T:(しばらく考えて)...分からない(笑)。でもそうだな...ドイツはエレクトロニックな音楽を好むよね。それから、ドイツ人は感情について現実的で合理的というか、哀しさや哀愁を表現したものを好む。それらの要素が僕達にはあるし、現にドイツのチャートを見るとデペッシュ・モードやプラシーボが人気だからね。

それは面白い意見ですね。では最後の質問になります。今回の来日では初詣に行ったそうですね。日本の文化に触れて興味深かったものはありますか?

T:すべてだよ(笑)! 日本は本当にエキサイティングな場所だ。観客も最高だし! とにかく全てが興味深かった。大学で日本語の勉強をしていたというのもあるしね。

そうなんだ! だからMCの日本語も上手だったんだ(笑)。

T:(照れ笑いしながら)ありがとう。

どんな日本語喋れるんですか?

T:(日本語で)初めまして。私はフィルです。銀行はどこですか?

(爆笑)

T:あとは...なんですか? 私はミュージシャンです。

マジ上手いっす! ちなみに、ニュー・オーダーも「Krafty」という曲を日本語で歌ったりしたんですが、是非ハーツも日本語で歌った曲を作ってください! マンチェスター繋がりということで。

T:わかった! 約束するよ!!

今日はありがとうございました!

T:ありがとう。とても楽しかったよ!


2011年1月
取材、文/近藤真弥

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