アラン・マッギー

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ALAN McGEE

まったく、U2が好きなんて
病気としか思えないよね



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去る8月、サマーソニック前夜祭ソニックマニアでDJを担当するために、今はなきクリエイション・レコーズの主宰者だったアラン・マッギーが久々の来日を果たした。

渋谷および銀座で現在上映中のクリエイション・レコーズ・ドキュメンタリー映画『アップサイド・ダウン』のプロモーション、そしてさらに新しいイベント「アラン・マッギーズ・クリエイション・ナイト」出演のため、彼は9月前半にも、ふたたび日本にやってくる。

今(この文章を打ちこんでいる瞬間)はまさにその直前なのだが、ぼく(伊藤英嗣)は8月に彼と6、7年ぶりに再会、インタヴューをおこなった。イベント直前で申し訳ない(ごめんなさい。本当は、もっと早くこの記事をアップしたかった...。みんな、来てねー!:汗)と思いつつ、それを公開しよう!

上で「抜きだした」アランの発言が、決してU2に対する単なるディスではないことも、わかっていただけるはずだ!



『アップサイド・ダウン』、いい感じだった。

「あの映画は、本当の『事実』がどうだったか、それなりにうまく表現できてると思うよ。まあ(監督の)ダニー・オコナーは、音楽業界にありがちな感じで今ちょっと持ちあげられすぎて、鼻持ちならない感じにはなってるけどね」

(笑)このインタヴューは、基本プロモーション・トークであるべきなのに早速毒舌...。こういうところが、アランらしい。

「いや、もちろん。作品自体はすごくクールなものになってる。だいたいさ、(プライマル・スクリームの)ボビー・ギレスピーに(ジーザス&メリー・チェインの)ジム・リード、(オアシスの)ノエル・ギャラガー、そしてぼく...とこれだけの役者が揃ってて、ちゃんとしたドキュメンタリーを作れば、つまらないものになるはずがないだろ?」

 そのとおり!

 あの映画では、クリエイションからレコードを出していたアーティストやスタッフをはじめ、本当にたくさんのひとたちの証言が聞ける。アラン自身にとっては、懐かしい顔も多かったのではないか。

「懐かしいという感じじゃないな...。なんというか、いつの時代にも素晴らしいバンドがいたし、彼らをサポートするスタッフたちがいた。彼らがかっこよければ、必然的にそのスタッフたちもかっこよく見えてくる。オアシスにしても、ジョイ・ディヴィジョンにしても、セックス・ピストルズにしても、時代が変わっても常に最高じゃないか。セックス・ピストルズがいたからこそ、マルコム・マクラレンもクールだったし、ジョイ・ディヴィジョンがいたからこそ(ファクトリー・レコーズ主宰者の)トニー・ウィルソンもそうだった。そしてオアシスやプライマル・スクリームが最高だからこそ、今アラン・マッギーもここにいられる...という...」

 いい姿勢だ。そして映画は、ノスタルジーを喚起するような作りにはなっていないとぼくも思う。今、いろんなことをやりたい...「なにかを起こしたい」というひとたちにとって指標のようなものになっていると思った。

「まさに、そのとおりだね。でも、そのコメントに対して、なんて返事していいのか、わからないよ(笑)。まあ、今ぼくがその質問に対してここでなにか語ってもリアルじゃないというか...」

 これも、いい姿勢!

 映画の最後のほうで、ノエルかボビーかどちらかが、「クリエイションが終わるのと同時にインディー・ロックが終わった」というコメントを残していた。ほとんどの場面に「うんうん」とうなずきながら見ていたぼくだが、でも、ここだけは正しくなくて「最近もいいインディー・ロック・バンドがたくさん登場している」と思った。

「イェー、まったく同意見だよ! クリエイションの終わりは、たしかにひとつの時代の終わりだった。だけど、ロックンロールそのものは終わるはずがない。たとえば、ドミノなんかもグレイトなレーベルだと、ぼくは思っている。もちろんドミノとクリエイションはあきらかに違うものだけれど、どちらも素晴らしいロックンロール・レーベルという点が共通している。ただ、その性質が異なるというか、時代は変わっていく、ということなんだ」

 最近も、新しいバンドをたくさん聴いたりしているか?

「いや、もうレーベルやマネジメントをやっていたころみたいには、さんざん新しいバンドを聴きまくったりはしていないけどね。『なにが、これからのトレンドか』みたいな世界から、とりあえず離れたいというか...。でも、もちろん好きなものは好きだし、なにより最近は、DJをやることに入れこんでる。新しいバンドのライヴを観たりすることは今も大好きだよ、ただ、今はもうレーベルもマネジメントもやってない、そういうことを『仕事』にしていないから、むしろ本当に楽しんで音楽と接することができてるって感じで、おもしろいよ」

ALAN_200108_A2_use.jpg ドミノといえば、アークティック・モンキーズ。彼らのニュー・アルバムは聴いたか?

「もちろん。良かったと思う。でも、やっぱ、ファースト・アルバムは超えられてないかな。(アークティック・モンキーズの中心人物アレックスといっしょにザ・ラスト・シャドウ・パペッツというユニットもやっていた)マイルス・ケインのソロ(アレックスのみならず、元オアシスのノエルも参加)は聴いた? あれも結構良くなかった? あと、まだ全然無名だけど、アイシー・ボムズ(...と聞きとれる。あとでググってみようと思ったんだけど、該当するつづりのバンドにグーグル上ではなかなか行きつかなかった...。すみません! 後日確認して更新します!:汗)というバンドもすごく好き。だけど、今はちょっと『新しいバンドを見つけて、ミュージック・ビジネスがそれで盛りあがる』という形に、ちょっとうんざりしてるんだ。それより音楽そのものを楽しみたいというか。どっちにしても、クリエイションはオアシスとかを輩出したけど、ぼくは『ナンバー・ワン・ミュージック・ビジネス・パーソン』って感じにはなれなかったし、別にならなくてもいいと思うし...」

 蓮舫氏の「ナンバー・ワンじゃないとだめなんですか!?」という発言を思いだし、つい微笑んでしまった(笑)。

 たしかに、スーパー・コンピューターが「世界一」になることには(そしてオアシスが「世界一」になったことにも)意味があるとは思うけど、「なにがなんでもトップにならなきゃ」という考え方には賛同できないところがある。

 だから、アランのこの発言にも、おおいに共感できた。

 でもってアークティック・モンキーズのニュー・アルバム。実は、ぼくはあれを聴いて、80年代の、クリエイション周辺に代表されるインディー・ロックとの共通項を強く感じたのだが...。

「イェー! ミスタ・イートウもそう思った? 俺もそう感じたんだよ! あれ、もろクリエイションって感じの音だったよな!」

 そういうレコードが、最近増えていると思う。ザ・ヴァクシーンズを筆頭に、スミス・ウェスタンズ、ヤックとか、あとザ・ドラムスとか...。

 ザ・ヴァクシーンズあたりでは、うんうんとうなずきながら聞いていたアランだが、最後のバンド名で少し表情が曇った(笑)。ザ・ドラムスは好きじゃない?

「(ばれたか! という顔で)いやー、個人的にはちょっと...(笑)。それよりグラスヴェガスのほうが断然いい! 今、彼らって日本に来てるの?」

 いや、今(8月なかば)には来てないはず。フジロックでは来てたみたいだけど...。

「(グラスヴェガスの中心人物である)アランから携帯メールが来てて、『今、日本にいるの?』と。だから、てっきり彼も日本にいるのかと思って(笑)」

 そういえば、映画のなかでノエルが「クリエイションにU2が好きなやつがいると知ってたら契約しなかった」みたいなことを言ってたような気がする(そこまで細かくメモとってなかったんで、曖昧な記憶ですみません!)。グラスヴェガスのアランもU2が好きだ(笑)。

「まったく、U2が好きなんて、病気としか思えないよね」

(笑)

「いや、まあ彼らもいい曲を書いてると思うし、別に彼らをディスってるわけじゃなくて」

 クリエイション・レコーズが始まった80年代前半のころ、ぼくは(とくにサード・アルバム以降)U2もわりと好きだった。ただ、当時「U2が好きかエコー&ザ・バニーメンが好きか」という言い争いがよくおきていたのだが、ぼくは当然エコバニ派だった(笑)...と伝えると。

「(若者のような顔に戻って)当然、だろ! 彼らは本当に天才だった!」

 アランがエキサイトするのもわかる。彼らは、まさに「労働者階級のヒーロー」だった。当時中心人物のイアン・マッカロックがインタヴューでこう答えていたことを憶えている。「このあいだ、ファンのひとりにこう言われたんだ。『あんたらのレコード買うのに、失業保険の最後の残り分を使っちゃったよ!』って。まったく申し訳ないと思いつつ、そう言われるのが、本当にいちばんうれしいと思った」。泣けた...。

「グラスヴェガスも同じだよ。グラスゴーのイーストエンド地区(最も貧しい地域)から出てきて、あそこまでビッグになったミュージシャンなんか、今までいなかった」

 同じグラスゴー出身のアラン・マッギーやボビー・ギレスピーは、たぶんそこまで貧しい暮らしをしていたわけではなかったのだろう。しかし、同じ労働者階級同士、気持ちは同じだ。だからこそ、クリエイション・レコーズの歴史(をふりかえった映画『アップサイド・ダウン』)は、「なにかを起こしたい」というひとたちの心に響く。

 ここで、ちょっと唐突な話題を...。最近のロンドン暴動について、どう思うか?

「まさに現在の経済的(資本主義的)問題。彼らの立場に立ってみれば、よくわかる。ポール・タックス(所得に関わらず、均等に課される税。90年代にも、それの導入に反対する暴動が起きている)のせいとかで、貧しいものの生活が昔より苦しくなっている。(クリエイションを始めたころよりも)いろんな営業許可とかが全然とりにくくなってて...。キッズたちがスニーカーとかがほしくて騒いでる部分もあるから、そこに政治的意図があるとは言いきれないけれど、根っこのところにはそれがあるんじゃないかな」

 アランとしやべっていて暴動といえば、当然初期ジーザス&メリー・チェインの「暴動ギグ」というトピックを思いだす(笑)。そこで最後の質問。

 今、クリエイション・レコーズがあったら、若者がその行き場のない衝動を発散する手段となり、あれほどひどい暴動も起きなかったのでは?

「そのとおり! みんな、お店や倉庫を燃やすんじゃなくて、(『アップサイド・ダウン』でも、アラン自身がさつな聴衆にビンを投げつけられていたというエピソードが語られていたけれど)俺にビンを投げつけてくれればいんだよ!」


2011年8月
取材、翻訳、文/伊藤英嗣


*ツイッターにて、高地えりか(ErikaHighland)さんより、以下のようなご指摘がありました。「映画でのU2の件は逆で、『メンバーにU2ファンがいると知っていたらオアシスと契約しなかった』とアラン・マッギーが言っていたように記憶しています。クリエイションの終わりがインディー・ミュージックの終了と発言していたのは、ボビーのほうかと」。たしかに! ありがとうございます!【9月10日(土)追記】


*アイシー・ボムズと聞きとれていたバンド名、確認しました! 正確にはアイシーワンズ(IC1s)でした(汗)。どうやら元ザ・リバティーンズのドラマー、ゲイリー・パウエルも絡んでいる模様。レーベル名は、25アワー・コンビニエンス・ストア(24アワー・パーティー・ピープルじゃなくて:笑)という素敵なもの、らしいです。

アラン・マッギーズ・クリエイション・ナイトのレポ(的なもの)は後日アップ予定ですが、その前に、彼といろいろミーティングしていた(単にバカ話をしていた...とも言う:笑)なかで、印象的だったことをいくつか。

彼は日本に来る前、オーストラリアでDJをやっていた。「どうでした?」と聞いたら、「皮肉で言ってるの?」と。「えっ、ダメだったんですか?」「いや、そうじゃない...」。

なんでも、オーストラリアでのインタヴューにおいて、ロンドン暴動でソニーの倉庫が燃えた事件について聞かれた彼は「ファニー」と言ったのを、NMEがめざとく見つけ(まるで日本のマスコミのように、文脈無視で)おおげさに書きたてたらしい。

「日本の政治家じゃなくてよかったですね。先日『脱原発』を主張する政治家が、そういった感じで発言の一部をマスコミに書きたてられ、即座にクビなってしまったんですよ」と言ったら、目をまるくして驚きつつ、苦笑してました(笑)。

また、現在日本で映画『アップサイド・ダウン』のサントラが出ていない理由を、ぼくは彼にこう伝えた。「UK盤が出たときワールドワイドの権利をとっていなかったため、すべての権利を日本でクリアしなければいけない。そのうえ、あるバンドが、すっげー高いこと言ってきてて...」。彼は「わかるわかる。大変だよな。クリエイションから出していたレコードの『原盤権』は、できるものはすべてミュージシャン本人に返すようにしてる。もちろん、メジャー・レコード会社が持ってるものもある。そういった再発仕事は大変だよね...」と。

この姿勢、ある意味、素晴らしく「反資本主義」的なものだと思った!【9月15日追記】

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