モーション・シティ・サウンドトラック

MOTION CITY SOUNDTRACK

ただ「ファック」って言わなきゃいけない
ときがあるのも事実なんだ


photo by Anthony Saint James
2012_07_MCS_A1.jpgアジアン・カンフー・ジェネレーションが主催しているNANO-MUGEN FES.の開催が、今年もいよいよ迫ってきた。7月15日と16日、横浜アリーナにて。

このフェスティヴァルをクッキーシーンが以前(雑誌時代)から注目してきた理由は、それが洋楽と邦楽、どちらかだけに重きを置いたイヴェントではないから。もちろんフジロックもサマーソニックも「洋邦とりまぜた」ものではあるけれど、やはり客観的に見て主役は洋楽だろう。そこに、いい感じで邦楽バンドも混ざっている。

NANO-MUGEN FES.も、主役はアジカンをはじめとする邦楽バンドだろうって? いや、たしかに、最初はそうだった。2003年にスタートした段階では邦楽バンドしか出演していなかった。しかし、2004年におこなわれたふたつのイヴェントのうち大阪会場にザ・クリブスが出演して以来、2005年にはアッシュやファラー、2006年にはザ・レンタルズやシルヴァー・サン、そして昨2011年にはマニック・ストリート・プリーチャーズやウィーザー...といった面子が登場。これで「邦楽中心のフェス」と言ったら、まったくもって非論理的だ...。

それだけではない。そこに登場する海外バンドが、どれもアジカンに影響を与えた、もしくは彼らが同時代的シンパシーを持っている者たちであることは特筆に値する。アジカンのような、普通の邦楽ファンにも人気の高い日本のバンドがこのような試みをつづけていることは、客観的に見て「日本における洋楽」に対して悪いことであるはずがない。はっきり言って、素晴らしい。

そして、今年のラインアップが発表になったとき、ぼく(伊藤)は仰天した。「うわあああっ!」と叫び声をあげてしまったくらいに。ファウンテインズ・オブ・ウェインとモーション・シティ・サウンドトラックが同じ日に(連日)出るんですか!? これ、すごすぎ。ある意味、夢のようだ...。どちらも、最高に「パワフルでナードっぽいスーパー・ポップ」をクリエイトしてきたバンド。ぼくとしては、このふたつのバンドとアジカンの音楽性は実に自然につながると思うのだが、一般的にはファウンテインズとモーション・シティのファン層さえ意外にかぶっていないことも知っている。後者のサード・アルバムは、元カーズのリック・オケイセックと並んで、前者のアダム・シュレシンジャーもプロデューサーとしてフィーチャーされていたことが、いまいち大きなバズに結びついていなかった。なんでだろう? 残念だ...という当時の思いも含み、この並びを見て余計にうれしくなってしまった。

もちろん、ほかのラインアップもグレイト。詳しくはここ...今年のNANO-MUGEN FES.サイトを見ていただくとして、クッキーシーンでは、モーション・シティ・サウンドトラック、そしてファウンテインズ・オブ・ウェインのインタヴューを連続で(過去数ヶ月、インタヴュー関係のアップが止まっていたことからすると、なぜ今度はこんなに早く? というくらいの速攻ノリで)お届けする。

まずは、モーション・シティ・サウンドトラック。実はこのインタヴュー、クッキーシーンのメイン舞台を紙媒体(雑誌)からウェブに移行するための準備をおこなっていたころ敢行されたものだ。いわゆる「新譜インタヴュー」(新譜のプロモーションのためにおこなうインタヴュー)ではないこともあって、ぼくが個人的に以前から聞きたかったことを、がんがん聞いている。ただ、なんとなくどたばたのなか発表の機会を逸していた。それを、ついに掲載できる。とてもうれしい。

さらに言えば、これ、ちょうど日本のバンド、既に解散してしまったビート・クルセイダースとの対バンの翌日におこなわれたもの...という意味で、なんとなくこのタイミングで発表するのも美しいだろう...と...! 久々に見なおしてみて、偶然アジカン関係のことも話題に出ていて、自分でもちょっとびっくり...。もちろん、リリースされたばかりのモーション・シティ・サウンドトラックの素晴らしいニュー・アルバム『Go』については(当然)聞けてないけれど、そのアルバムに対するぼくからのコメントは、インタヴュー・パートのあとに...。

というわけで、まずは、2010年3月におこなわれたモーション・シティ・サウンドトラック、ジャスティン・ピエール(ヴォーカル)、トニー・サクストン(ドラムス)のインタヴューを、どうぞ!



ジャスティンは、日本語を勉強してるそうですね!

ジャスティン・ピエール(以下J):(笑)スコシね...。スコシ。

昨夜のライヴではMCのとき「ガリガリくん」(のCMソングを)歌ってました。

J:そうだね(笑)。

「ガリガリくん」好きなんですか?

J:CMがおもしろかった。まだ食べてみたことはないんだけど。

トニー・サクストン(以下T):昨日ぼくは食べてみたけど、おいしかったよ。

何味を食べましたか?

T:えっ? 何味...といわれても...。

J:どんな味があるの?

いろんな味があるんですけど、基本はソーダで、その他の2種類ぐらいのフレーヴァーがシーズンによって入れ替わったりするんです。

J:へえー。

とにかく、昨夜のギグは最高でした!

T&J:ありがとう!

オーディエンスもたくさん一緒に歌っていましたけど、そういうのって、海外からのアーティストでは珍しいと思うんですよね。オアシスとかだったらわかるんですけど。

T:オアシスは巨大なバンドだけどね(笑)。

はい。最近、そこまで巨大なバンドではないにしても、ゲット・アップ・キッズも来日していますが...。

J:うん、飛行機が一緒だったよ。

えっ、そうだったんですか!

J:うん。

彼らのことは、バンドとしてどう思ってますか? 彼らのファンですか?

J:もちろん!

T:ぼくらはみんな、彼らが大好きだよ。

J:彼らはすごいバンドだよ。彼らのオーストラリアの...。

T:パースのギグ。

J:そう、パースで彼らのギグのオープニングをやったんだよ。彼らのプレイを見ているのは、すごく楽しかった。彼らと一緒に最後にプレイしたのは...6年前かな。

T:うん、2004年。

J:そうだね。6年前になる。でも彼らはすごくグレイトなバンドだよ。

T:6年前にプレイして以来、久しぶりに先週オーストラリアで彼らと一緒にプレイできて、うれしかったね。

バンドとして、彼らから影響を受けたと言うことは可能ですか?

J:そう言えるかもしれないけど、(ゲット・アップ・キッズの)ヴォーカルのマットがスーパーチャンクの大ファンなんだって聞いて...。

でしたっけ?

J:うん。それでぼくもスーパーチャンクの大ファンだから、ぼくらはもともとの音楽の趣味も似てるのかなって思った。でもおもしろいよね。ゲット・アップ・キッズも5ピースのバンドで、ぼくらもそう。彼らにもキーボーディストがいて、ぼくらにもいる。まあ、彼らから影響を受けたって言えるところもあるかもしれないけどね。

よくわかります。なんというか、とても正直な返答をありがとうございます(笑)。スーパーチャンクといえば...(彼らが運営し、アーケイド・ファイアの北米盤を出して以来ビッグなレーベルと目されるようになったインディペンデント・レーベルである)マージと契約しようと思ったことはないんでしょうか?

J:そうだね...。確かに(いったんエピタフを離れてUSコロンビアと契約する前に)そういう可能性もあったかもしれないけど、実現しなかった。マージは大好きなレーベルなんだよね。まあ、彼らにちょっと無理な要求をしちゃったのかもしれない(注:ということは、実際に交渉がおこなわれたのだろうか!?)...。でも、スーパーチャンクはぼくにとって、永遠に大好きなバンドだよ。でも彼ら、どうしちゃったのかな。もう、9年間もアルバムを出してない。

最近、EPは出しましたけど...(注:このインタヴューの約半年後に、9年ぶりのアルバムをリリースした。そのときのインタヴュー記事は、こちら)。日本ではわりとジャンルで分けて聴いてるリスナーが多いような気がするんです。それで、あなたたちのバンドはエモ・バンドって見られていて、スーパーチャンクはインディー・ロックって感じで見られている。でも、彼らのリスナーもあなたたちのレコードを聴いててもいいと思うんですよね。

J:ぼく自身は...ぼくらがいったいなんのバンドかって、わかってないから。でもそれっていいことだと思うんだ。みんなが...いろんなジャンルの音楽を聴いてくれたらって思うけど...。

本当に! そしてクッキーシーンが紙の雑誌だったころからの読者には、インディー・ロック・ファンが多い。ここでスーパーチャンクの話が聞けたのは、とてもよかったと思います。

J:いいね(笑)。ありがとう。

もともとキーボード・プレイヤーをバンドに入れようと思った理由は何だったんですか?

J:その決定に一番大きな影響を与えたバンドは、レンタルズだった。

おお!

J:(現キーボード奏者の)ジェシーとぼくは、彼らの大ファンなんだよ。それで、同じキーボード...モーグのシンセサイザーを自分たちのバンドに入れたら、カッコいいんじゃないかって思ったんだ。それがもともとのアイディアだったんだよ。だからジェシーが加入してプレイし始めたころは、モーグのシンセサイザーしか使っていなかった。それが次第に、ほかのシンセサイザーやピアノにまで広がっていったんだけど。とにかく、それが一番大きな理由だったんだよ。

当時ぼくらの間では、ウィーザーよりレンタルズの方がいいって言われていたりもしたんですが、あなたはどうでしたか?

J:ウィーザー、最初の2枚のアルバムはすごくよかったよね。

ええ! ぼくは1枚めがとにかく大好き!

J:それ以降は...ガタガタして休止状態になってしまったけど。でも、レンタルズはすごくよかったね。ぼくはクレイジーなのかもしれないけど、レンタルズのファーストよりも、セカンドの方が好きなんだ。

なるほど!

J:彼らの作品は、みんな好きだけどね。去年レコードを出してたのは知ってる? 4曲入りのシングルを3枚、合計12曲出したんだけど、全部よかったよ。前のレコードから考えたら10年以上もたってたと思うけど(注:実際には2007年にもEPを出していたようです)、ぼくは(レンタルズの)マット・シャープの大ファンだし、彼の音楽は本当に好きだよ。

T:彼らの「Waiting」のカヴァーをレコーディングしたこともあったよね。あれ、どうなっちゃったんだろう(笑)? レンタルズのファーストへのトリビュート・アルバムの企画があって、そのためにぼくらもカヴァーをレコーディングしたんだけど...。それっきり聞かないね...。

J:そう。トニーが女の子のパートを歌ってさ(注:このインタヴューの約3ヶ月後にリリースされた。ヤー・ヤー・ヤーズ、トーキョー・ポリス・クラブ、ティーガン&サラ、アッシュ、アジアン・カンフー・ジェネレーションなどが参加。タイトルは『Lost Out In The Machinery』。そのリリース時におこなわれた、マット・シャープのインタヴューは、こちら)。

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photo by Anthony Saint James

ところで、2009年12月に出たクッキーシーン「紙の雑誌ヴァージョン」最終号...78号のインタヴューであなたが言ってたんですけど、トニーはおもちゃのデザインみたいなのに興味があるんですか? ちょっとその話を聞かせてもらえますか?

J:ああ、(2010年にUSコロンビアからリリースされた)アルバム(『My Dinosaur Life』)のアートワークのこと?

はい。

T:ジャスティンがタイトルを考えついたとき、ぼくはジョー・レッドベターってアーティストのファンで、友だちになったばかりだった。彼がぼくらのバンドのファンだってこともわかって、一緒に何かできたらいいねって話してたんだよ。それで『My Dinosaur Life(ぼくの恐竜みたいな生活)』ってタイトルを聞いて、彼がよく動物系のおもちゃのアートワークをやってることを考えて、恐竜のキャラクターなら頼みやすいんじゃないかって思ったんだ。あのアートワークに描かれてるキャラクターは、それぞれの曲に登場してくるキャラクター。とにかく、彼と一緒に仕事ができるってことですごくワクワクした。彼の作品のファンで、おもちゃを収集したりしてたからさ。今、ぼく自身でおもちゃの会社を興す計画もしてるんだよ。恐竜のおもちゃなんだけど、近いうちに実現するといいな。

日本でも、彼はそういうおもちゃのコレクターの間では彼は有名なんでしょうね。

T:彼が日本にサイン会みたいなイヴェントで来たことがあるのは知ってるよ。

いや、知らなかったです(汗)! ぼくも特撮系フィギュアにはすごく興味があるんですけど...。前回あなたたちがフジ・ロックで来日した際、トランスフォーマーのおもちゃをたくさん買ってたって聞いたように思うんですが、それって本当ですか?

J:トニーやジェシー...マシューもそうかもしれないけどね。彼らはビニール製のおもちゃを収集してるんだよ。ぼくはそれほどでもないっていうか...あまりにたくさんありすぎて、圧倒されちゃって...(笑)。彼らほど、はまれない。でも、彼らはそういうおもちゃの大ファンだよ。

あなたは小津ファンなんですよね?

J:そう。小津安二郎の大ファン。

渋いですね! 一方トニーやジェシーがはまってる、そういうおもちゃの世界って、日本でも、アメリカでも相当大きなものだとは思うんですが、日本ではそういうもののファンはオタクと呼ばれています。

J:オタク?

えっ、日本語勉強してるのに知らないんですか(笑)? なんというか、ナードというかギークというか(ここでオタクの説明)...。いや、あなたたちがルックス的にオタクというわけではないんですが(笑)。

J:やってることはオタクだけどね(笑)。

(笑)そういうオタク的な文化って、70年代に(テレビ放送がいったん終了してから)『宇宙大作戦(スタートレック・TV・オリジナル・シリーズ)』が草の根的にアメリカで盛りあがったころに始まったと感じてるんですが、いかがでしょう?

J:ぼくは『スター・ウォーズ』は大好きだったんだけど、『スタートレック』シリーズはあまり気にしてなかった。でも(2009年に)新しい映画(『スター・トレック』)が公開されて、それがすごくよかったから、それからは好きになった。あれ、本当によかった! 前の作品はどうでもよかったんだけど、新しい映画がすごく好きだった。おかしいんだけど、人から聞いたりレヴューを読んだりしてる限りじゃ、古くからの『スタートレック』ファンは、みんなこの新しい映画に怒ってたんだよね。だからおもしろいんだよ。完全な新しいファン・ベースを築いたって点で。ぼくも同じように感じてたからさ。それまでも別に嫌いではなかったんだけど、支持してもなかったっていうか、「あ、『スタートレック』ね」みたいな感じで受け止めていた。

昔からの頑固な『スタートレック』オタクじじいたちが、ちょっとうっとおしい、みたいな(笑)?

J:まあ、そんな感じもあるんだろうね(笑)・

ぼくはじじいなんで、オリジナルの...特にTVシリーズの『スタートレック』も大好きでした...。だけど、ぼくは...新しい映画も大好きなんです!

J:うん。去年ぼくが見た中で、一番よかった映画かもしれない。

はげしく同意します! ところであなたは、以前からいくつかの曲で『トランスフォーマー』のことをモチーフにしていますよね。それから実写映画『トランスフォーマー』が公開されて、サントラも出たんだけど、それがあまりよくなくて...。あなたたちがオマージュを捧げた曲の方がいいのに、って思ったんですよ。

J:ありがとう。ぼくは子どものころから、あのアニメの大ファンだったからね。もちろん、その実写映画も映画館で見たよ! 少年時代から、ぼくにとっては大きな影響だった。これまでのアルバムには全部、1曲は『トランスフォーマー』に絡んだ曲を入れようとしてたんだけど、2枚目のアルバムに入れるつもりだった曲がぼつになったんで、録りなおして3枚目に入れた。だから、1枚目のアルバムには『トランスフォーマー』のことについて触れた曲が1曲、そして3枚目には2曲入ってる(笑)。それで、昨年(2009年に)実写映画の2作目が公開されたわけだけど...。正直言って、最初の映画はよかった。楽しかったし、バカげたところもよかった。でも、2作目は完全な駄作だったね。クソそのもの。何ひとつとしていいと思えるところがなかった。悪いけど。

あなたは素晴らしい映画評論家ですね(笑)。

J:ありがとう(笑)。

1作目では、オタクっぽい主人公の男の子が、マッチョな高校のヤンキー先輩にガールフレンドをとられそうになり、彼がしょげてバンブルビー(というオートボットがトランスフォームした車)に乗って帰るとき、バンブルビーがラジオからザ・カーズ「Drive」の一節《Who's gonna drive you home tonight》(《誰が今夜、きみ...彼女を家に車で送っていくのだろう?》などと切々と歌いあげる、基本的に「失恋ソング」ともいえる部分)を流して主人公を鼓舞したところとか、最高でした!

J:(笑)映画自体は別に偉大な映画とかそういうものじゃなかったと思うけど、それでもすごく楽しかった。2作目は、一体どうしちゃったの? って思った。すごく混乱したよ。性的なジョークも多かったし。あれは基本的には子ども向けの映画のはずだよ。とにかく、制作した誰かがあの映画にへんな要素を入れて、混乱させたんだと思う。わかんないけど。ぼくはとにかく、『トランスフォーマー』がすごく好きなだけだから。

それ、基本ですよね! 子どもに聞かせたくない言葉といえば、あなたたちはレコードに「マザーファッカー」という言葉を入れていますが(笑)。

J:それは、いいと思ってる。昔、学校の先生が、やたらといろんな罵る言葉が書かれているシナリオって、結局作品の中で何が言いたかったかを上手に表現できるほどのクリエイティヴィティがないものだって言ってたことがあったんだけど、その通りだと思う。でも同時に、ただ「ファック」って言わなきゃいけないときがあるのも事実なんだ。

素晴らしい! ところで、あなたたちのバンド名を省略してMCSって表記することもありますが、Sって5にも見えますよね。MC5みたいな(笑)。初めて何年も前にあなたたちの名前を見たとき、もしかしてそれって意図的に付けたのかとも思ったんですが、それは偶然ですか?

J:完全な偶然。まあ、初期にはそうやって違う印象を人に与えたこともあったけど、最近ではみんな、ぼくらは危険じゃないってわかってくれてると思うよ。

それ、いいですね。「ぼくらは危険じゃない」って(注:MC5は、モーター・シティ・ファイヴの略。ブラック・パンサーと絡んだ急進的で危険な政治思想の持ち主と目されていた。ちなみに、レコードに初めて「マザーファッカー」という言葉を入れたのは彼らだと言われている)。

J:まあ、MC5と比べたら、誰も危険じゃないだろうけど(笑)?

(笑)話を『スター・トレック』に戻せば...。ぼくはティーンエイジャーだったころ、カーズやディーヴォ、XTCの大ファンだったんです。彼らの音楽って、あなたたちのそれに通じる部分もたくさんあるんだけど、あなたたちは彼らとは違う。新しい世代を関させる。ディーヴォやXTCは、ぼくにとって昔の『スタートレック』みたいなものだと思うんです。そして、モーション・シティ・サウンドトラックは、新しい『スター・トレック』の映画みたいなものだと!

J:わあ、そう言ってもらえるって、すごくうれしいね! ありがとう、本当にありがとう...。

い、いや、ぼくも正直な気持ちを言っただけなので...。では、最初にツイッターについて。先述の紙のクッキーシーン・インタヴューで、あなたたちは最近ツイッターを愛用していると聞きました。トニーがジョー・レッドベターと知り合いになったのもツイッターを通してだってと、そこでジャスティンが言っていました。ツイッターって、ファンとの距離を縮めるのにすごくいいメディアだと思うんです。

T:うん、ぼくはそうやってジョーと知り合いになった。彼にメッセージを送って、ファンですって言ったら、彼がメッセージを送り返してくれて、次第に実際に友だちになるようになっていったんだけど。

J:ぼくと(女優の)クリスティン・ベルにはそういうことは起こらなかったけどなあ。彼女にコンタクト取ろうとしたんだけど。

T:ぼくもしたよ。

J:ふたりとも嫌われたね。

(笑)おちのついたところで、今日は、ありがとうございました!

J&T:ありがとう(笑)!

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photo by Anthony Saint James

実は、このインタヴューの流れで、モーション・シティ・サウンドトラックのニュー・アルバムに関して言いたいことが、いくつかある。それについて少し述べさせてほしい。

まずは、アルバム・タイトル『Go』。ジャスティンが日本語を勉強していることは冒頭で述べたとおりだが、これは彼らにとって5枚めのアルバムとなる。「5」は日本語で「go」...というのは考えすぎかもしれない(笑)。

もうひとつ、このインタヴューで、ぼくはXTCという昔のバンドの名前を出した。今回のアルバムの冒頭に収められている「Cirsuits And Wires」という曲の「『メカニカルな』曲調および歌詞」から、即座に(じじいなので:笑)頭に浮かんだのは初期...2枚めまでのXTCだった。彼らのセカンド・アルバムのタイトルは『Go 2』だったんだよな...(1枚めは『Go 1』とか『Go』じゃなくて『White Music』だったけど、『Go 2』のUK盤ファースト・プレスについていたダブEPは「Go +」と題されていた)。そしてXTCのサード・アルバムのタイトルは『Drums And Wires』だったなあ...などいうことを思いだす...(じじいなので)。

でもって、今回のアルバム、またもや日本盤の歌詞対訳をやらせていただいた(ちなみに、日本盤を見るとボーナス・トラックの対訳がないことに関して「アーティストの意向により」と書いてありますが、ぼくの理解によれば「日本語化できる〆切までに原詞がアーティスト側から届かなかった」のであって、別にぼくの対訳がいやがられたわけではない...と思うんですが...:笑)。それで、なにより驚いたのが、日本盤ボーナス・トラックを含むラスト・ナンバー「Floating Down The River」に、こんな一節があったことだ。

《きみも同じように感じてる?/理解できるかな?》

以前、雑誌時代のクッキーシーンのためジャスティンに電話インタヴューをおこなったとき、彼の歌詞にとにかくむちゃくちゃ共感できると言った。すると、彼は、こんなふうに応えてくれた。

「歌詞に関して言ったら、自分自身のことに関して書くことがほとんどなわけだけど、よりダークな部分の要素に関して書いてることが多いし、僕のところにキッズがやってきて、『あなたの歌詞にすごく共感しました!』って言われると、ある部分ではうれしいけど、ある部分ではすごく悲しくなる。僕が感じてるようなことをほかの人も感じていたらかわいそうっていうか。でも、ある意味では悲しい時にも仲間がいるって思えるなら、悪いことばかりじゃないよね。ビター・スウィート、みたいな(笑)」

ぼくは、この発言にまたもや激しい共感を覚えてしまったわけだが(笑)、こういった「他人に対する距離感」が、これまでのモーション・シティ・サウンドトラックの歌詞には、たしかに存在した。しかし、上記の一節は、それを完全に乗りこえているではないか!  ここには、完全に「新しい一歩」が感じられる。

ここで、ふたたびアルバム・タイトルに話を戻そう。『Go』という言葉の、現在完了形は「Gone」だが、そこには「死んだ」という意味もある。つまり「Go」とは「進んでいる」ことでもあるが「死につつある」状態と言えなくもない。もちろん、生きとし生けるもの、すべてはいつか死ぬ。このアルバムには「Everyone Will Die」という曲が入っている。少し前にツイッターでも書いたのだが、ぼくは数ヶ月前に叔父が亡くなったとき、初めて「火葬後に骨を拾う」という体験をした。「Everyone Will Die」を聴くたびそのときのことを思いだす。この歌詞を翻訳しながら、まじで涙が止まらなかった。

「Floating Down The River」というタイトルをみたとき、このフレーズも(たとえばインドでは死体を川に流すといった連想から。もしくは、誰もが死ねば灰...土となって自然になかに戻っていくというイメージから)「死」につながるなにかを連想した。いや、決してネガティヴな意味ではない。誰もがそうなるからこそ、今というこの一瞬が重要というか...。もちろん、そんなぼくの「解釈」になるべくとらわれないようフラットに翻訳することを心がけたのだが、ロッキング・オン7月号に掲載された中込智子さんによるインタヴューを読むと(関係ないけど、中込さんもぼくとためをはるくらいの特撮ファン...。彼女もトランスフォーマー、好きかな?:笑)、「Everyone Will Die」はジャスティンの祖母が亡くなったときの体験がベースになっており、彼はそれによって「以前にも増して、生きることや死ぬことについて真剣に考えるようになった」「人生に対しても、それまでと違う貪欲さで接するようになった」「今は本当に、生きているって素晴らしいことだと心の底から感じている」。でもって、そういう思いが最も色濃く出ているのが「Floating Down The River」だと。

《きみも同じように感じてる?/理解できるかな?》という、これまでにないほどストレートな物言いがここにある意味も、深く納得できる。

最後になってしまったが、今回のアルバム、USコロンビアから発表された前作『My Dinosaur Life』をへて、前々作までのエピタフ・レコーズに戻っている。これもなかなかレアなパターンだと思うけれど、(インタヴュー中でちらりと語られていた)コロンビアを選択する際と同じような、極めて現実的ジャッジによるものなんだろう。

『Go』の内容は、初期...メジャー契約前...とくに2枚めまでのサウンドに近いという意見も聞くが、ぼくの個人的見解はちょっと違う。よくある言い方かもしれないが、出発点に戻ったようでいて、完全に新しい地点に到達している。そして、インタヴュー中の言い方を使えば、これまでで最も「インディー・ロック」っぽいかも(笑)。

とにかく、彼らは、またもや「最新作が最高傑作」という理想のパターンをつづけることに成功した!

2010年3月
取材/伊藤英嗣
翻訳/中谷ななみ
2012年7月
文/伊藤英嗣

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モーション・シティ・サウンドトラック
『ゴー』
(Epitaph / Sony Music)

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