プライマル・スクリーム

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PRIMAL SCREAM


暗がりの時期から脱けだして、いい時期に

向かっていくようなものであってほしい


さて、みなさん、プライマル・スクリームのニュー・アルバム『More Light』は、もう聴かれただろうか?


このインタヴューは、それがほぼ完成したころ、彼らとは旧知の仲であるUKジャーナリスト、ジェームズ・ブラウンが中心人物ボビー・ギレスピーに聞いたものだ(ちなみに、このインタヴューのあと、1ヶ所だけ急遽曲順が変わっている。最終的に、このインタヴューで「12曲目」と言われているものが11曲目、「11曲目」と言われているものが12曲目になった。ほかは変わっていない)。


もちろん「旧知の仲」とはいっても「アーティスト対ジャーナリスト」、決して「なあなあ」になっていないどころか、その対極、いい感じの「丁々発止」。そして彼は『Screamadelica』25周年記念盤ボックス・セットで、実に力の入った長文インタヴューを担当していた人だけあって、単なる「公式インタヴュー」を超えた「決定版」ともいえる内容になっている。


11月初頭の来日を前に、クッキーシーンでは、その全文を完全ノーカットで発表する。内容が深すぎて、アルバムを聴かないとふにおちない部分があるかもしれない。できれば、すでにアルバムを入手された方は聴きくらべる形で読んでほしい。そして、これで彼らの音楽に少しでも興味を持ってくださる方がふえればさいわい...とか思ったり...(これ読んで、逆に「なに、こいつ? うぜー!」と感じる方もいるかも? まあ、それはそれで...:笑)。


では、どうぞ!

2013_03_primal scream_A1.jpgphoto by Niall O'Brien

ジェームズ・ブラウン(以下JB):ええと、まず語ってほしいのは、オープニング・トラック...1曲目「2013」のタイトルが今年の西暦年数であるってことに関して。これは「意図的な声明」と言えるのかな?


ボビー・ギレスピー(以下BG):ぼくらは、ものすごくエクストリーム...極端な時代に生きている。でも、そんな事実は普段耳にするような音楽には決して反映されてないと思う。みんな、どんどん「非政治的」になってるというか「非政治化」されているというか...。だけど、それに対する適切な抵抗運動とか批評はあまり見かけない。基本的に、音楽に関しては、そうだといえるんじゃないかな。ぼくらの音楽がそうなればいいというか、少なくともそんな問題にとりくんだつもり。ここには怒りの声もあれば、抵抗の姿勢もある。でもさ、どうして誰も抵抗しないのかな? なぜ、みんな声をあげない? みんな死んだみたいにおしだまって...。まあ、大抵「世間のひとたち」は「今起こってること」に関して、そうなりがちだけどね。みんな、もうちょっと目覚めてほしい。実際に今なにが起こっているのか、目を見ひらいて凝視してほしい。だからさ、J・G・バラード(注:『結晶世界』などの作品で有名な作家)が亡くなるちょっと前に言ってたんだけど「今はサイエンス・フィクション(SF)小説を書く必要はないのかもしれない。だって、ぼくらはかつてそこに描かれたような世界を生きているのだから」。激しく同意するね。だからこの曲は、そういった類の問題を扱ったものだと、もしかしたら言えるかもしれない...。ぼくらが向かってるのは、決して「賢明」とは言えない時代であるような...だけど、誰もそう言ったり書いたりしない...どころか、気づいてさえいない人も多い...。みんな寝てるか、麻酔にでもかかってるか...。


JB:「セレブ」みたいな存在にごまかされて、本質を見失ってる...とかね。2曲目の「River Of Pain」は?


BG:はい?


JB:すごくパーソナルなんだけど、いや、だから別にきみのプライヴェート・ライフと結びついてるとかそういうことじゃなくて、さっきの話みたいに「社会のありかたに対して批評的である」といった姿勢の対極にあるというか...。今、親の世代からうけつがれてきた感じの問題...うまくいってない家族とか、そういうことに焦点を合わせてる気もするし...。


BG:まあ、そんな感じかな。


JB:代々ひきつがれてきた行動様式...でもいいけど。


BG:そうかもね。そういったものにもふれている。ぼくの頭には、ひとりの子どもが暴力的な状況にとらわれて、雨に打たれているという画が浮かんでいた。世代から世代へうけつがれる狂気みたいなもんだよね。そういったサイクルから脱出しようと試みることが重要かもしれない...みたいなことを考えていた。もちろん「River Of Pain」というフレーズには、ほかにいろんなものが含まれてる。でも、説明しすぎないようにはしたいな...。


JB:もちろん、そんなことしなくていいよ。


BG:この曲にはフリー・ジャズ的なパートもある。サンライト・オーケストラのメンバーも参加してて...。


JB:なるほど。


BG:3曲目「Culturecide」の歌詞は、ニュー・ヨーク・シティーを発つ列車のなかで書きはじめた。それはシティーをとおりすぎて、ハーレムとかいろんなものが次々と目に飛びこんできた。そこに住む人たちの生活みたいなものが見えた。下のほうにね。だけど、列車に乗ってるかぎりは単なる風景にすぎない。快適な移動の一部として、安全に見ていられる。そうそう、この曲ではマークが歌ってくれてるんだよね。完成ヴァージョンを妻に聴かせたらジョン・ライドン(注:PiLの中心人物)が歌ってるのかと思ったらしい。「ジョン・ライドンみたいに聞こえる」って。「いや、マーク・スチュワート(注:元ザ・ポップ・グループの中心人物)なんだけど」みたいな。どちらも同じ時代に登場してきた。曲ができて、ほとんどの歌詞も書けて、あとはサビの部分にもうちょっとチャッチーなフックがほしいな...と思ってた。以前マーク・スチュワートとセッションしたとき、彼が「Culturecide(文化的殺戮)」というフレーズを使っていたことを思いだした。それで彼に聞いてみた。「ぼくらがその言葉を使ってもいいですか?」。快諾してくれたんで、今度はスタジオに来て一緒に歌ってもらえないか頼んでみた。その結果、このトラックには彼とぼくの声が入ってる。


JB:おお!


BG:ぼくらはみんなザ・ポップ・グループが大好き。マークのソロも。グレイトな作詞家で、ぼくのフェイヴァリット・シンガーのひとり。


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BG:4曲目「Hit Void」は全編LAでレコーディングした。あっ、ヴォーカルだけは、ここ(ロンドン?)で録ったから、バッキング・トラックはLA録音って感じだね。そこにはワリー・ハイダー(Wally Heider)が60年代後半か70年代にサン・フランシスコで使っていたミキシング・デスクが置いてあった。たぶんクリーデンス・クリアウォーター(注:クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル:CCR)が「Green River」とか「Proud Mary」を録るときに使ったやつだと思う。


JB:ああ!


BG:デヴィッド・クロスビー(注:元ザ・バーズ、CSNのひとり)のファースト・ソロ・アルバム『If I Could Only Remember My Name』、すっげー名盤と思うんだけどそれとか、グレイトフル・デッドの『American Beauty』とか、Tレックスの「Get it On」だか『Electric Warrior(電気の武者)』だかも、そいつで録られたんじゃないかな。


JB:そのミキシング・デスクゆえ、そのスタジオを選んだ?


BG:いや全然。


JB:その事実を調べて、自分で決めたのかと。


BG:違う違う。デヴィッド・ホルムズが、そのスタジオを使ったことがあって、「こういった曲なら、あそこのデスクがぴったりじゃない?」と提案してくれたんだ。でもたぶん、あの男がそういった音楽にすごく興味があるとは思えないから、いわゆる歴史みたいなものはよく知らなかったんじゃないかな。単に、音そのものの印象というか。ウッディってやつがスタジオの経営者なんだけど、そいつがワリーのデスクも所有してる。スタジオ4か、どこかに置いてあった。ニール・ヤングの最初の2枚のソロ・アルバム『Neil Young』『Everybody Knows This is Nowhere』も、グラム・パーソンズの『Grievous Angel』『GP』もそれでやったはず。サン・フランシスコにあったそれで、ぼくらもやった。歴史の一部になった感じというか、グレイトなロックンロール・サウンドだったというか...。とにかく、いい感じだった。


JB:バンドのみんなもそう思ってた?


BG:そう、みんなが。


JB:歴史ってやつを、そこまで尊重する...?


BG:いや、でもさ、やっぱ尊重すべきだと思うんだよね。音楽を作る手順というのは、これまで培われてきたものにのっとっておこなわれる面も大きい。それをいい形で受けつぎつつ、現在にふさわしいものを作ろうとしているという部分も、ぼくらにはある。先人たちのスピリットやエネルギーを、ぼくらが継承してるってのも、まあ、クールなことだと思ってる。


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photo by Niall O'Brien

2013_03_primal scream_A2.jpg

BG:5曲目「Tenement Kid」は、ぼくがメロディーを歌って...サビでは《わからない、なぜかはわからない》と歌いつづけてる。サビのあいだじゅう、ずっと。実際、歌詞は最後に作ったんだけどね。ベース・ラインとドラム・ループがまずあって、それにメロディーをつけた。そこにいろんなものを加えていった。ギターを少々、キーボードを少々、それから、チェレスタ(古い鍵盤楽器)も。「Tenement Kid」では、バーリー(注:バーリー・カドガン:リトル・バーリーの中心人物)もギターを弾いてくれている。


JB:バーリーは今もプライマル・スクリームのライヴに参加してるの?


BG:うん。このアルバムでも、ギターだけじゃなくて、バッキング・ヴォーカルやコーラスでたくさん参加してる。アルバムのベースのほとんどはジェイソン・フォークナーが弾いてる。デヴィッド・ホルムズが紹介してくれた。ジェイソンはLA出身の、ファンタスティックなベース・プレイヤー(注:元スリー・オクロック、元ジェリーフィッシュ。ソロ活動をとおして、また元ジェリーフィッシュのロジャー・マニングおよび元レッド・クロスのブライアン・レイチェルと組んだTVアイズというユニットの一員としても知られている)。ぼくらは90年代によくデヴィッド・ホルムズと一緒にやっていた。90年代末ごろには、彼のソロ・レコードにも参加した。曲を共作して、ぼくがそこで歌ったり、アンドリュー(・イネス)がギターを弾いたり。とにかく、そのころから、デヴィッドとぼくらは友だちだった。彼にはシネマティックなビジョンがある。映像的...映画的な拡がりを、音に付与することができるというか。だけど、このアルバムにおける楽器類の、もしくは音響的なレイヤー(多層性)に関しては、アンドリューによるところが大きい。サウンド・プロデューサー的な役割を果たしてくれている。それもデヴィッドとの作業で学んできたという部分があるんだけどね。ぼくらには、わかってた。彼と作るレコードは、いつだって、ストレートかつ単純明快に邁進する、ギター2本とベースとドラムによる、ハイ・エナジー・ロックンロール...にはならない。


JB:全然そうじゃないね、たしかに。


BG:もっとソフィスティケイトされたレイヤーの重なりで、シネマティックで、オーケストラルで、要するにデヴィッド・ホルムズっぽい。だから、彼とやればこんな感じの映像的レコードになるだろうな...というものが最終的にできた。でも、音楽的に言って、アンドリューはプロデューサーとしてクレジットされるべき。一方デヴィッドもそう。ぼくらがそんなふうに思いきりプレイできる環境を整えてくれたし、ホーン・プレイヤーとかドラマーとかベース・プレイヤーとかパーカッショニストとか、たくさんのグレイトなミュージシャンを連れてきてくれた。


JB:6曲目「Invisible City」は、ぼくにとって、ビッグなヒット曲って感じに聞こえる。


BG:ぼくもそう思うよ。これは、まあ祝祭の曲、みたいな...。町中で車を走らせてるときに見えてくる、いろんなものを賛美してるというか。運転席から見えてくるちょっとしたものを、ただ描写しつづけてる。ロンドンの夜。ケバブの店とか、そんな普通のものが、とても美しい。道を歩いてる人たちとか、彼らのようすとか、ネオン・ライトとか、単なる交通標識までが...。


JB:だけど、それって同じものだよね。その別の面を、この曲で見せている? だから昔の、ほかの曲でその言葉を使ったときはさ...。《ケバブ・ショップ》って...


BG:パブとかモスクとか?


JB:ふとももが日焼けした女の子たちとか...


BG:はいはい。そのあたりにたむろしてるヤンキー少年が、まるで彼女らの犬みたいに見えるよな。きれいに毛を刈り込まれたファッショナブルな犬みたいに...。


JB:だから、あるものを見て、フラストレーションを感じると同時に、美しさを感じる? 同じものを美しいと思う、その一方で...


BG:いや、常に、美しい。それだけ。


JB:デイヴィー・ヘンダーソンが参加してるのは、この曲?


BG:そう! デイヴィー・ヘンダーソンが演奏してくれてるんだよ!


JB:彼について、知らない人も多いんで、説明してくれるかな。いわゆる有名な...成功を収めたミュージシャンじゃない。彼はウィンというバンドでもプレイしてた(注:ウィンは、オレンジ・ジュースやアズテック・カメラを輩出した、ポスト・パンク期を代表するインディペンデント・レーベル、ポストカード・レコーズの主宰者が80年代なかばごろに始めたレーベル、スワンプランドからのシングルでデビューした)。


BG:そうだね。デイヴィー・ヘンダーソンは、もともとファイアー・エンジンズというバンドの、シンガーでギタリストだった。ぼくらがまだ音楽をプレイしていなかったころから絶大なインスピレーションを与えてくれていたし、実際に演奏を始めたら始めたで、ものすごくでかい影響を受けたバンドだよ。ぼくらがバンドを結成した理由のひとつは、ああいうことがやりたいと思ったから。彼とはずっと友だちなんだけど(注:プライマル・スクリームはスコットランドのグラスゴー出身。ファイアー・エンジンズは、エジンバラのバンドだった)、まったく「普通じゃない」感じで、セクシーかつファンタスティックな彼のギター・プレイは、本当に最高。ぼくらの曲で、いつか彼にギターを弾いてほしいと思ってた。でもって、これは、それにふさわしい曲かな、と。奇妙で、ストレンジで、リズミックな感じで...。そうだろ?


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BG:そして7曲目「Goodbye Johnny」。このトラックのインスピレーションは...そう、はっきり言って、ジェフリー・リー・ピアースがガン・クラブを始める前に作った「Goodbye Johnny」という曲のデモから来ている。ジェフリー・リー・ピアースはガン・クラブという素晴らしいバンド(注:1980年にLAで結成)のシンガーで、ソングライターだった。曲も歌詞もグレイトだったし、ロマンティックでビューティフルなやつだった。服装もきまってたし、びっくりするほどかっこよかったというか。だから、ぼくらはこの曲のデモを彼に送って、ジェフリーのトリビュート・アルバムが作りたいんですけど...と聞いてみた。彼は、いいね! と言ってくれたんだよ! そして、まずはこのトラックを、このアルバムに入れることにした。ぼくらだけによるトリビュートって感じで。ジェフリーの曲を、埋もれさせることなく、生きたままにしておきたかった。それができたんじゃないかな。


JB:8曲目「Sideman」、ミュージシャン用語では「バック・ミュージシャン」って感じのフレーズがタイトルになっている。グレイト!


BG:いや、実はそうでもないんだけど...。この曲は、いつも誰かの側(サイド)にいて、その人の味方をしてくれるような人について歌われてる感じかな。誰もがそいつは、まともな、いいやつだと思っている。だけど、実は単なるおべっか使いというか、ちょっと気持ち悪いやつというか...。気をつけたほうがいいぜ、やつはそういう意味での《サイドマン》...みたいな。ミュージシャン云々とは、あまり関係ないかも。


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BG:つづいて9曲目「Elimination Blues」だね。これは、即興的に作りあげたフリーダム・ブルースみたいなもの。本物のブルースってことじゃなくて、ぼくらなりのブルースって感じ。この曲にはハイ・トーンの声が必要、だけどそれは女性じゃなくて...ロバート・プラント(注:レッド・ツェッペリンのヴォーカリスト)っぽいやつ...とぼくらは思ってた。今の彼は、ぼくらの友だちみたいなものだし。あるとき、ぼくは偶然彼と遭遇して、スタジオに戻ってからアンドリューに言った。「さっきロバート・プラントを見かけたんで、挨拶した」。そのあとぼくらはお互いの顔をまじまじと見つめあい、今度はアンドリューが言った。「だから、あのトラック! 彼の声こそ、あのトラックに必要って話だったよな!」。それでぼくらは彼にあらためて連絡をとり、数日後、彼がスタジオにやってきて、ぶちかましてくれた。すっげえクールな感じだったね。主にアンドリューがレコーディング・エンジニアを務めて。ぼくも、そこにいて、ロバートといっしょに歌った。だって、これはフリーダムな感じの曲だから。事前にきっちりアレンジを決めたりはしなかった。どちらもヘッドフォンを被って、彼とふたりでマイクの前に立っていた。ぼくが彼に向かって合図するんだよ「ワン、ツー、スリー、フォー」って。すげえ! 彼の隣にいて、ヘッドフォンをはずすと、彼の歌声が生で聞こえてくるんだよ! 一体これはなんなんだ、と...。彼とぼくだけが、ひとつの部屋にいるなんてさ...!


JB:そういったミュージシャン同士、もしくはシンガー同士の共同作業で、ほかにも特に興味深い部分が、アルバムにあったりする?


BG:そうだな...「2013」では、アンドリュー・イネスとケヴィン・シールズ(注:マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの中心人物)がギターを弾いている。ケヴィンは、ずいぶん長いことぼくらと一緒にやってきた。ライヴとかに参加してくれるメンバーとして、8年か9年くらいやってたのかな。レコーディングにも、もちろん参加してくれていたし。これは、またしてもプロダクション面からみた選択だった。このトラックには、なにかが欠けてるな、必要なものはなんだろう? という。「2013」の場合は、誰か全然まともじゃない、サイケデリックでサイコティックでハイ・エナジーなギターを弾くやつが、テクスチャーの要素としてほしいと思った。それは、もうケヴィンしかいないだろう、みたいな。とてもアブストラクト(抽象的)で、とても美しい...ぼくのフェイヴァリット・ギタリストのひとりだし、人間としても好きだ。たぶん、みんな、なにか自分をインスパイアしてくれるレコードが好きで、そういったものがもっとほしいと思ってるんだろうね。でも、そんなレコードは、なかなか手に入らない。ぼくらは、自分たちがやってきたようなことに関しては大得意というわけじゃない。でも、だんだん、うまくできるようになってきたとは思う。もう、ずいぶん長いことやってきたからね。ぼくらは、まあ、いい感じのソングライター・チームだと思うし、職人みたいな意味で、うまくやれているような気がする。悪くないミュージシャンで、シンガーたちで、プロデューサー・チーム。そりゃ、みんなのヒーローたちと比較できるような存在じゃない。だけど、ぼくらは現在の...みんなと同時代のミュージシャンだし、できる限りベストな方法で、自分たち自身を表現しようとしてるってこと。


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BG:10曲目「Turn Each Other Inside Out」に関しては、デヴィッド・メルツァー(David Meltzer)という詩人の作品から引用を試みてみた。たしか、ニュー・ヨーク出身だけど、サン・フランシスコをベースにしてる。いわゆる「ビートニク」(注:主に50年代から60年代にかけて知られるようになった動き。ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズといった人たちの作品が特に有名)の人。彼の詩を再構築して、アレンジしなおしたものを、「Turn Each Other Inside Out」という曲にしてみた。だけど彼はぼくらがそうしたことに、たまげてたよ。「ぼくの言葉に、また違った生命を与えてくれて、うれしい」と感謝してくれていた。ぼくがそれをプレイするたびに、なんかちょっと照れたような顔をして。うん、ぶっとばされてた。このアルバムのなかの、ぼく自身のフェイヴァリット・トラックのひとつ。まあ、それもまた、アンドリューのおかげなんだけどね。


JB:この曲がシングルになりそう?


BG:どうかな...わからない。でも、とにかくアンドリューのギターは、この世のものとも思えないほどぶっとんでるし、なんというか、これまたフリーなロックって感じかな。アンドリューは、本当にいい形で自己表現ができていると思う。


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BG:アンドリューは...、11曲目「Walking With The Beast」で、彼はダルシマーを弾いてる。エリザベス朝時代...いわゆる英国のエリザベス朝時代(15~16世紀)からあった楽器で、ブライアン・ジョーンズがローリング・ストーンズのアルバム『Aftermath』で弾いてたやつ。


JB:ぼくにとって、アルバムで最も印象に残ったトラックのひとつかな。


BG:おお、いいね。


JB:「Walking With The Beast」が。


BG:それは、なぜ?


JB:もうちょっと、この曲について、語ってくれないかな。


BG:わかったわかった。その前に、どうしてこの曲が気に入ったのか教えてよ。


JB:ぼくにとってはだけど、なんか、明らかにフィル・スペクター・サウンドを、なんとなく思いださせる感じだったんだよね。あとヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか、それから初期メリー・チェインも(注:ボビー・ギレスピーは、初期ジーザス・アンド・メリー・チェインのドラマーでもあった)。


BG:ああ、なるほど。まあ、そんな感じのコード進行だしね。だけどさ...。


JB:《Beast(獣)》というのは誰のこと?


BG:うーん、わかんないな...。だから、ここにこうやって座って、これが誰について歌われた曲とか説明しても意味がない気がするというか...。「Walking With The Beast」では、アンドリューと、ぼくと、ドラマーのダレン・ムーニー(注:90年代からプライマル・スクリームのメンバーだった)がプレイしてて...。そしてアンドリューが...


JB:ダルシマーを弾いてる。


BG:そう、ダルシマーだね。ダレンがドラムを叩いて、アンドリューがベースを弾いて、ぼくが歌って、マーティン・ダフィー(注:1987年のファースト・アルバムの段階からプライマル・スクリームのレコーディングに参加、90年代からコア・メンバーのひとりとなった。後期フェルトのサウンドの要でもあった)がオルガンとかを弾いたあとで、ダレンがまたパーカッションを加えて...。ベーシックな...小さな「バンド」単位で成立してる曲かな。


JB:ここで録ったの?


BG:そう、この部屋でレコーディングした。まさに、このスタジオ・ルームでね。


JB:12曲目「Relativity」。


BG:ああ...ここには、純粋な憎悪の気持ちがこもってる。だから、たくさんの怒りとか憎しみといった感情をはきだしたものが、曲という形になったというか...。哀れみとか悲しみの気持ちも、含まれているような気もする。わかんないけど、そんな感じ。かなり直観的に構成された曲としか言えないな(注:こう指摘してもボビーはなんとも思わないだろうけれど、訳者はこの長尺曲から、MGMTの特にセカンド・アルバムを連想した。MGMTのメンバーにそれを言ったら、たぶんとても喜ぶだろう。あのアルバムには、80年代にプライマル・スクリームやフェルトがやっていたことに影響された部分があると、彼らは明言していたから)。


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BG:アルバムのラスト...13曲目に「It's Alright, It's OK」をもってくるというのは、デヴィッド・ホルムズのアイディアだった。これをアルバムの最後に持ってくると、映画のエンド・クレジット・ロールみたいな感じでいいんじゃないかな、という。


JB:これは、いかにもプライマル・スクリームといったノリの(注:より詳細に言えば『Screamadelica』のオープニングっぽい感じの)曲だよね。


BG:トミー・ジェイムス&ザ・ションデルズ(注:「Hanky Panky」「Mony Mony」「I Think We're Alone Now」といったヒット曲で知られる、60~70年代に活躍したバンド)みたいにも聞こえるけどね。だけど、それはぼくの妄想かも。えっ、いかにもプライマル・スクリームっぽい曲かな?


JB:うん!


BG:ぼくらがやったら、なんでもそうなるんじゃない? このアルバムの曲順を最初アンドリューが考えたとき、アナログ盤2枚組みたいな感じになってた。


JB:ほお、アナログ盤2枚組(注:アンドリューが曲順をひねりだした『Screamadelica』は、91年当時その形でリリースされた)。


BG:だけど、最終的に、今回はデヴィッド・ホルムズの提案した曲順がいいんじゃない? ということになった。映画みたいな流れになってるでしょ。「2013」がオープニング・クレジット(注:今の映画はオープニングで主にタイトルしか表示されないけれど、昔の映画にはオープニングで俳優やスタッフのクレジットを流すものも多かった)。2曲目の「River Of Pain」でストーリーが始まる。そこから本編に入っていき、最後に「It's Alright, It's OK」。ぼくらは、これを聴いてくれるみんなにトリップしてほしいと思ったんだよね。まさに、旅に出る、って感じで。そしてエンド・ロール・クレジットっぽい「It's Alright, It's OK」では、いい気分で映画館から出てほしい...みたいな。わりと明るい気分でさ。そんな感じかな。いろんな曲順を試してみたけれど、何度も聴いて、これがベストだと思った。まあ、うまくいったんじゃないかな。


JB:ジャケットのアートワークは?


BG:友だちのアーティスト、ジム・ランビーがやってくれている。ありがたいよ。だから、今まさに作業してくれているところ。


JB:最後に、アルバム・タイトルについて。


BG:『More Light』というのが、いいと思ったんだよね。普段は暗がりになっているところに、まぶしい光が射しこんでくるような感じ。人目にふれない「隠された場所」というか、みんながあまり口にしたがらないような、それについて語るのもはばかられるような、そんな場所とか物事にね。実際、このアルバムのいくつかの曲では、そういったことについて歌われている。ぼく自身は、朝起きて、カーテンやブラインドを開けて、ぱっと光が入ってくる瞬間が好き。そんな感覚、生まれかわったような、インスピレーションにあふれた...言うなればポジティヴな感覚。だけど、これまでのぼくらのアルバム・タイトルといえば、『Exterminator』とか『Vanishing Point』とか『Evil Heat』とか、なんというか...


JB:ぴりぴりして、どぎつい感じ。


BG:そうそう。いや、このアルバムにも、そういった激烈な部分はあると思う。だけど、もうちょっと前向きというか、そうだな、暗がりの時期から脱けだして、いい時期に向かっていくようなものであってほしい。だからさ、なんというか、世界というのは真っ暗な場所だと思うんだけど、もうっちょっと光が差しててもいいんじゃないか、そうできるんじゃないか...みたいな...。ぼくらがいる場所も、そんなに悪くはないんじゃないか...。


JB:そんな感じに聞こえるよ、このアルバムは。


BG:ぼくが言えるのは、そんなところかな。とにかく、ぼくらは今も生きてる。ずっとそうだった。そんな感覚をもっと発揮させられる、いいアーティストになりたいといつも願ってきたし、本当にいい形で自分たち自身が表現できたらと思ってきた。今度のレコードでは、まあ、それができたって感じかもね。



2013年3月

取材/ジェームズ・ブラウン

翻訳、文/伊藤英嗣




2013_03_primal scream_J.jpg
プライマル・スクリーム
『モア・ライト』
(Ignition / Sony Music)

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