カインドネス

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KINDNESS


古い新しい問わずに、これまで僕が聴いてきた

音楽を僕の解釈で表現したい


カインドネスの最新アルバム『Otherness』がリリースされたのは、今年10月のこと。先日発表したクッキーシーン・トップ・50・アルバムズ・2014で11位を獲得! というのは大袈裟かもしれないが、聴けば聴くほど味わい深さが増してくる良盤なのは間違いない。詳しくは弊メディア編集長伊藤のレヴューに任せるとして、筆者のインタヴューでは、『Otherness』にあるジャズの側面について掘りさげた。このアルバムのリリースに合わせて多くのインタヴューが公開されたが、ジャズの要素にフォーカスを当てたものは少なかっただけに、そういう意味でも今回のインタヴューは貴重なのではと、我ながら自負している。年末年始のささやかなプレゼントとして、少しでも楽しんでもらえたら幸いだ。


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連日の取材でお疲れだと思いますが、調子はどうですか?


アダム・ベインブリッジ(以下 : A): すっごい疲れてる(笑)。


おつかれさまです(笑)。日本に来たのはいつ頃?


A : 8日に来たよ。


日本に来てどこか行ったり、リラックスする時間などはありました?


A : 実は3時間しか自由時間がなくてね(笑)。その時間は買い物に出掛けたよ。


今回の来日に伴いアルマーニ主催のパーティーでライヴをしましたが、お客さんの反応はどうでした?


A : 良かったよ。踊ってくれたしフレンドリーな雰囲気もあったからね。音楽に対して興味を持ってくれているというのが伝わってくるし、ショーをちゃんと観てくれていると感じる。


それでは、最新アルバム『Otherness』についていろいろ聴かせてください。まず、前作と比べてジャズの要素が強いなと感じました。


A : 自分にとってジャズは、一番知らない分野なんだ。もちろんよく聴くし、興味があるジャンルではあるけどね。


ジャズだとどのようなアーティストを聴くんですか?


A : アーマッド・ジャマル、ビリー・コブハム、アブドゥーラ・イブラヒムかな。


ベテランと呼ばれるひとたちですね。ロバート・グラスパーなどは聴いたりします? 『Otherness』を聴いたとき、ロバート・グラスパー周辺のジャズ新世代や、フライング・ロータスのような〝ジャズの再解釈〟に近い視点を感じたので。


A : 聴くよ。分けるとすれば、僕にとってロバート・グラスパー、フライング・ロータス、サンダーキャットというのは、ジャズの中にいる人たちだという印象がある。でも僕自身は、その中にはいない、外側の人間だと思ってる。


僕が『Otherness』を聴いて感じた〝ジャズの再解釈〟という側面は、あなたが意図したものではないのでしょうか?


A : たくさんのジャズ・ミュージシャンと作業をすることはあるよ。そういう人たちと一緒にやるなかで、この部分はもっとやったほうがいい、ここは抑えたほうがいいというのがあって、そういう調整によってジャズっぽさが出る度合いは変わってくる。でも、そうしているうちに、何かしらの括りを越えた曲が生まれることもある。ジャズでよく使われるブルー・ノート・スケールというのがあるんだけど、それを今回のアルバムでは自分なりに取り入れてみて、満足できる形になったと思う。


『Otherness』ではいろんなアーティストとコラボレーションをした影響か、前作よりもライヴ感が強いと思いました。


A : 今回おこなったコラボレーションは、すべて同じスタジオでやったんだ。ファイルを送りあって作りあげるという今時の手法をいっさい用いてないし、体と体をぶつけるようなセッションをやってるから、ライヴ感が出てくるよね。それから、なるべくファースト・テイクを使うようにしたから、よりライヴ感が増していると思う。


実際に相手と向きあって音楽を作っていくのがアダムの好みなんですか?


A : うん、ファイルを送りあうのは好きじゃないんだ。コンピュータをまったく使わないで済むのであれば使いたくないしね。


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今回ゲスト参加したなかでは、ケレラのヴォーカルが特に印象的です。


A : 彼女のことは、「Bank Head」という曲を聴いて知った。なぜかは覚えてないけど、その曲をリリース前に聴く機会があって、そこで聴いたんだ。トラックが本当に素晴らしかった。それで彼女に会ってみたいと思って、僕からアプローチをしたんだ。


ケレラといえば、その「Bank Head」が入ってるアルバム『Cut 4 Me』をフェイド・トゥ・マインド(Fead To Mind)からリリースしてますよね。フェイド・トゥ・マインドや、

姉妹レーベルのナイト・スラッグス(Night Slugs)周辺の音楽は聴いたりするんですか?



A : よく聴いてるよ。ナイト・スラッグスからリリースしているボク・ボクとは、彼が音楽を作りはじめる前からの付きあいなんだ。僕からすると、カインドネスとナイト・スラッグスは、同じような音楽から影響を受けていると思うんだけど、それがまったく違う音で表現されているのは面白いと思う。


ボク・ボクと知りあったキッカケって覚えてます?


A : 最初はネット上で繋がって友達になったんだ。それからロンドンで一緒にDJをするようになって...。もう10年か11年くらいの付き合いかな。


今の話で、あなたがどんなDJをするのか気になってしまいました(笑)。どんなジャンルをまわすんですか?


A : どこでやるかにもよるんだけど...お気に入りのジャンルというのがないんだよね。フィンランドでのパーティーでプレイする機会があったんだけど、ヘルシンキはそんなに大きくない街だから、700人くらいそこに集まっていた。だから、他のところに行く人はいないだろうし、さらにみんな酔っぱらっているから、ちょっと危ないことをやってみようと思ったんだ(笑)。それで、踊っている人に対して、ヒップホップ、R&B、フェイド・トゥ・マインド、ナイト・スラッグス、ディスコ、シカゴ・ハウス、ジャズなどをラジオ番組のように流したんだ。それが僕の理想とするDJスタイルだしね。少し混乱しているときもあったけど(笑)。


ハハハ(笑)。そういういろんな音楽を混ぜ合わせる感性は『Otherness』にもあると思うんですが、それがダークなフィーリングに聞こえるのが興味深いと思いました。


A : うーん...そう感じるのであれば、それは自然に出たんだと思う。


あなた自身はそう感じてないんですか?


A : ダークなフィーリングというよりも、メランコリックだね。


なるほど! メランコリックのほうが適切ですね。そんな雰囲気に触れて想起したのがシャーデーなんですが、シャーデーは聴きます?


A : 聴くよ。まだリリースされてないんだけど、ダイアン・バーチと曲を作ったとき、シャーデーのバンドに参加しているスチュアート(スチュアート・マシューマン)にサックスを吹いてもらったんだ。シャーデーの未来ヴァージョンみたいな良い曲になってる。


それは楽しみです! 『Otherness』はジミー・ダグラスがミックスを担当してますが、アルバムに参加しているデヴ・ハインズ(ブラッド・オレンジ)も、『Cupid Deluxe』でジミーにミックスを頼んでますよね。この共通点は興味深いと思います。


A : デイヴと僕では、ジミーに求めた音は違うと思う。デイヴの場合は、張りつめたような、勢いがある感じを求めていたけど、僕はもう少し柔らかいサウンドが欲しかったからジミーに頼んだんだよね!


いまきみが言った"柔らかさ"って、僕の耳にはオーセンティックなソウル、ジャズ、ディスコのように聞こえたんですが、それが今回アダムが欲しかったサウンドということですか?


A : うん、その通りだよ。


そして、『Otherness』を聴いて感じたのは、これまでの音楽史が残してきたいろんな素晴らしい音楽を組みあわせたうえで、新しい音楽を作ろうという意識です。


A : 古い新しい問わずに、これまで僕が聴いてきた音楽を僕の解釈で表現したいというのがあって、そうやっていると、いろんな音楽がそのなかで繋がっていく。


ちょっと変な質問かもしれませんが、消費するスピードを上回るように次々と音楽が生まれている現在において、新しい音楽は作れないという諦念を持ちながら制作するアーティストもいます。アダムは新しい音楽を作りえると思いながら音楽を作っていますか?


A : お気に入りのアーティストがふたりいるんだけど、それはジェイ・ポールとジャム・シティー。彼らは完全にオリジナルなものを作っているし、そういう天才を見ていると、可能なんじゃないかなって僕は思うよ!


アルマーニのクローズド・パーティーでのライヴとは別で来日ライヴを考えていたりします?


A : まだどんな形でのライヴになるかわからないけど、来年の初めくらいに来れたらいいなとは思ってる。次回はクローズドなものじゃなくて、もっといろんな人に観てもらえたらなって思うよ(笑)。『Otherness』は前作よりも複雑だから、それをどうやってライヴで表現しようか考えてる...まあ、ちょっと様子を見てみるよ(笑)。


2014年10月

取材、文/近藤真弥



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カインドネス
『アザーネス』
(Female Energy / Beat)

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